揚げ物は20年食べていない
ケガを防ぐためにセルフケアは欠かせない
――では栄養面に関して、とくに気をつけていることはありますか?
原:食事も含めてですけど、コンディションを整えるというのはとても大事ですよね。40歳を超えた今だとトレーニングなのか、仕事なのか、または他のストレスなのか、自分が何で疲れているのかわからない状態があるので(笑)、とにかく余計なところで疲労を蓄積させないということで、内臓疲労には常に意識を向けています。
――内臓の疲労をためないというのは?
原:私は体調を崩した二十歳のときから、内臓に負担をかけると言われている、油分の多い料理や冷たい食べ物をできる限り控えるようにしてきました。俗いう揚げ物料理のトンカツや唐揚げ、天ぷらなどはもう20年くらい食べていませんね。ただ、肉類や魚介類などのタンパク源は好きなので、揚げる以外の調理方法で摂取するようにしています。トレーニングではどうしても体に大きなダメージを与えるので、それ以外のところで体への負担を増やさないように、特に食事では今でも内臓疲労に意識を向けるようにしています。なかなかストイックになれない方は、一つ体に悪いことをしたら、二つ体に良いことをするというような考えで取り組むといいかもしれませんね。
――一つ体に悪いことをしたら、二つ体に良いことをする。参考になります。では、お酒もあまり飲まないんですか?
原:晩酌はしないですね。ビールも美味しいと思うし、嫌いではないですけど、肝臓機能のコンディションはスポーツパフォーマンスにダイレクトに繋がることがわかっているので、それを考えると飲みたくなくなるんですよ。ただ、自分のターゲットレースが終わった後はご褒美的に飲んだりはしますけど(笑)。でも、そのときも飲む量の上限は決めています。
――指導や仕事もあるなかで、今現在、ご自身の練習にはどれくらいの時間が割けるのでしょうか?
原:できるだけ毎日体を動かすようにはしていますが、週によって違いますよね。指導のときにプールに入るので、水の感覚がなくなることがないので助かりますが。水中練習をする場合は、できる限り仕事前の朝の時間帯に泳ぐようにしています。例えば今日ならフィットネスクラブのプールで、7時半頃から約75分くらいの練習時間で泳ぎました。
――泳いでから仕事にいくのですね。
原:そうですね。今日はその後、横浜まで行ってスイム指導して、それからこのスタジオに戻ってきてパーソナルセッションをして、この取材の後にもまたパーソナルの予定が入っています。
――常に体を動かしていますね。
原:そうなんです。だから泳ぎの練習はできるだけフレッシュな状態でやりたいので、朝やるようにしています。陸上トレーニングはこのスタジオがあるので、レッスンの合間にやったりもしています。
――泳ぎはフレッシュな状態でやるというのは何か理由があるのですか?
原:指導で1回プールに入ってしまうと、体が冷えてしまったりして、その後にトレーニングを頑張るモチベーションになりにくいんですよね。だから朝のフレッシュなときに泳ぐようにしているのですが、どうしても先に水泳の指導が入ってしまうときは、夕方や夜の空き時間を使って、陸上で追い込むようにしています。
――なるほど。四十代も半ばにきて、ケアにもいろいろ気を使うのではないですか?
原:スキンストレッチといったツールを使ったりして、セルフケアはしっかりやるようにしています。
――どういったセルフケアをしているのでしょうか?
原:例えば、このマグネシウムスポーツローションはトレーニング前に塗っておくと、筋肉がよく働き、ケガや故障の心配がなくなります。マグネシウムには筋肉の働きを調整する作用の他に、エネルギー代謝を促進して疲労回復の手助けをしたり、筋肉痛を緩和する作用があるのですが、マグネシウムは口から摂取するよりも、皮膚からのほうが吸収率が高く、吸収速度も早いんです。足をよく攣ってしまう人にもこのマグネシウムスポーツローションはすごく効果があると思いますね。
――(写真左の)これはなんですか?
原:これがスキンストレッチです。皮膚の動きや細胞の流れにスポットライトを当てた、誰でも簡単に皮膚を摩るだけでセルフケアができるツールです。国産の最高級ステンレスでできた優れ物で、これもトレーニングやレース前後には手放せませんね。就寝前にもスキンストレッチでケアしています。
――皮膚をさするだけで違うものですか?
原:皮膚を含めた浅筋膜層へアプローチするものですが、服の上から気になる部分を摩るだけで効果を感じますよ。就寝前のスキンストレッチを忘れると翌朝後悔するくらいです(笑)。あと、このアーゼライト(写真:緑色のボトル)は、食事の消化吸収をサポートしてくれる多重活性酵素のサプリメントになります。先ほど話した内臓への負担を減らすための消化サポートと、食事で摂った栄養がしっかり体内へ吸収されるよう手助けしてくれます。それから呼吸筋を鍛えるパワーブリーズです(写真右の赤い器具)。
――呼吸筋を鍛えることも心肺機能強化につながるわけですよね?
原:そうですね。私は50mのレースでは無呼吸で泳ぐので呼吸筋はしっかり鍛えておきたい部分です。これをやっていると泳いでいるときの呼吸の努力感が小さくなって、息が上がりにくくなります。口に加えて深く強い呼吸を30回行なうのですが、吸気時にダイヤル式の負荷がかかるので吸いづらくなっていて、横隔膜や肋間筋といった呼吸に関する筋群が鍛えられます。細いストローだと吸いづらいみたいなところがあるじゃないですか。それに近い感覚だと思ってもらえればわかりやすいでしょうか。もともとは喘息の治療やリハビリテーションから開発されたものだったようです。そこからスポーツや音楽の世界にも広がってきたんですよね。出張などでトレーニングの時間が取れない場合や泳げない日でもこれだけはやっておくようにしています。私は更に時間の有効活用でお風呂に入りながらやってます(笑)。
――こうしたケアを取り入れたのはいつからですか?
原:今紹介したものはここ数年ですね。この他にもいろいろあって、セルフケアは昔から考えながらやってきています。
――こういうケア用品というのはどこから発見するのですか?
原:信頼できる方々からの紹介や、自分の勉強のためにワークショップやセミナーへ聴講しに行くこともあるので、そういったところで情報を得たりしますね。そういった場合も、得たものを鵜呑みにせず、自分の体でしっかり試していきながら、より合うものを使うようにしています。
取材&文・佐久間一彦/撮影・中田有香
1974年生まれ。静岡県出身。日本体育協会認定水泳上級コーチ、NESTA認定パーソナルフィットネストレーナー、一般社団法人スポーツ人材育成協会理事。元200m自由形日本記録保持者及び元400m・800mリレー日本記録メンバー。1998年アジア大会金メダルや2001年福岡世界選手権ファイナリストなど、国内主要大会のみならず、国際大会の経験も豊富。1993~2015年まで23年連続で日本選手権(2011年代表選考会を加算)に出場するなど、40歳を過ぎた現在でも未だ日本の第一線で活躍中の鉄人スイマー。
原さんが指導するヴィンチトーレへの問い合わせはこちら