悩むこと、考えることも含めて
作品づくりは楽しい
――サムライ・ロック・オーケストラとの出会いは?
坂井:知り合いの方がサムライ・ロック・オーケストラというのがあると教えてくれたことがきっかけです。そこでオーディションがあることを知って、せっかくだからポールを見せたほうがいいということで、紹介してくれた方が持ち運べるポールを運ぶのを手伝ってくれて、オーディション会場で組み立てて、ポールダンスを披露しました。それで合格したんです。
――少し形は違いますけど、子どもの頃に描いていたミュージカル女優にたどり着いたわけですね。
坂井:舞台に立つというのは変わらないですからね。舞台ではポールダンスだけをやっていればいいというのではなくて、ダンスをしたりフラッグを振ったり、なんでもしなければいけない舞台なんです。だからポールダンス以外はできませんとは言えなくて。もともとバレエもやっていたし、新体操もやっていたし、二十歳すぎてからはヒップホップやジャズも習ってはいたので、踊ることがすごく好きなので、なんでもできるから頑張ろうと思ってやっています。
――普段は稽古もあるんですよね?
坂井:今は舞台ができているので、あとは会場に行ってリハーサルをして本番という形なんですけど、作っている間は毎日稽古でした。サムライは1年ごとに作品を変えるので、作品替えのときに1カ月間、稽古場を借りて10時~22時まで缶詰めで稽古をします。全員での稽古と並行して、自分の演目の作品づくりもします。
――なかなか大変そうですね。
坂井:大変なんですけど、楽しいですね。ただ曲をもらって「踊って」って言われるのではなくて、ストーリーと役も合わせて、どういう技を見せたらその役っぽく見えるのかとか、そういうことを考えるのがものすごく楽しいです。
――現在公開中の「オズの魔法使い」ではどんな役を?
坂井:今回は悪い魔女なので、気持ち悪いポーズをしようと思ったんです。顔の半分がひび割れたメイクをして、気持ち悪いポーズをしています。あとは去年とか一昨年よりも曲が激しかったので、それに合わせた踊りを意識しました。私はゆったりした曲できれいに踊るほうが得意で、バラード系、感動させるものが本当は好きなんです。でもサムライは真逆のものをやることが多いんですよね。今回はとにかく曲が激しいので、メチャクチャ激しくしてみようかなと考えて、止まる間もなく激しく動いて、今までとは違う感じにしています。いい人の役だったら私の得意なきれいに踊って笑顔でいれば型にはまるんですけど、私は悪役のほうが何でも表現できるのでいいなって思います。
――悪さにもいろいろありますからね。
坂井:そうなんです。笑ってて怖いのもあるし、無表情で怖いのもあるし。いろいろな表現の幅があるから、西の魔女は悪い魔女だけど、どういう性格にしようとか考えますね。サムライはセリフのないアクロバットミュージカルなので、全身でその役を表現します。でもやっぱり「オズの魔法使い」というストーリーの中を見ているので、みんなが思っている西の魔女の許容範囲を超えちゃいけないんですよね。どうやって怖く笑おうとか、どういう仕草が怖いとか、魔法を出せる仕草ってなんだろう?とか、いろいろ考えることが多いので、作品をつくるのは楽しいなって思いますね。どうしよう?って悩むこともありますけど、楽しいです。
――基本は前向き、全部楽しい方向に考えているんですね。
坂井:そうですね。ポールダンスがものすごく好きなんだと思います。実際、サムライの舞台でポールを躍らせてもらっていて、アンケートに「ポールダンスのおねえさんがものすごくカッコよかった」って書いてくれる子どもがいたり、私の母くらいの年齢の方が「ポールダンスが素敵でした」とか書いてくれたりしているのを見ると、もっともっとこうした舞台やいろいろなところでポールダンスを披露できたらなって思いますね。
取材・佐久間一彦/撮影・神田勲
12月22日生まれ。岐阜県出身。クラシックバレエ、新体操などで培った経験としなやかな体、類い稀な身体能力を活かして、現在はポールダンサーとしてショーなどに出演。2015年のミスポールダンスジャパン大会で優勝を果たす。2013年よりサムライ・ロック・オーケストラに出演。芸術的で妖美なポールダンスに会場全体が酔いしれる。
サムライ・ロック・オーケストラ