今回、お世話になったのは、システマのインストラクターを務める天田憲明さん。『システマボストーク』にお邪魔しました。この日のレッスンは午後8時からでしたが、レッスン前に個人指導を行なっていただきました。まずは、基本動作と呼吸法を学びます。
システマには、「Keep breathing(呼吸し続ける)」「Keep relax(リラックスを保つ)」「Keep straight posture(姿勢を真っ直ぐ保つ)」「Keep moving(移動し続ける)」という4つの基本原則があるそうなのですが、人は嫌なことや嫌いな人に遭遇したり、追い込まれた状況になると、この基本原則の真逆になる傾向があると天田さんは言います。
想像してみてください。仕事に追われてパソコンに向かっているとき、上司に怒られているとき、人にナイフを向けられたとき……あなたは呼吸が浅くなり、背筋は丸く、体が硬くなっていませんか? そんなときはまず、大きく息を吸ってみることが大事なんだそう。天田さんに言われた通り、大きく息を吸うとそれだけで自然と姿勢が真っ直ぐになり、緊張から解れ、リラックスできるような感覚がありました。またそれは視野を広げ、いろいろな対処法が目に入ることにつながるそうなのです。
例えば、人にナイフを向けられたとき、相手がナイフを持つ腕の外側は、攻撃を受けづらいひとつの場所だと説明を受けました。嫌いな人に肩を組まれたときは、脇の下からクルっと一回転し、相手の体から身を離すという方法があるそうです。腕を掴まれたときも、逆方向に逃げようと抵抗するのではなく、相手が自分の手を引く方向に沿って向かっていけば逃げやすいと言います。
呼吸して、リラックスして、姿勢を真っ直ぐにし、視野を広げて行動する。ここまで基本動作を教わる中で、システマの4原則というのはすべてつながっているということがわかりました。
そうなると、システマで一番大切なのはやはり“呼吸法”だということになります。「システマ」と検索すると、痛みに耐えるための独特な呼吸法が話題となっていて、とある芸人さんもこのシステマの呼吸法をネタにしている人もいるほどです。
しかし、痛みに耐える必要がない場合の基本の呼吸の仕方は「鼻から吸って、口から吐く」。これだけ。システマに限らずよく聞く呼吸法ですが、これを実際にやる機会というのは少なく、ましてや動きながらだったり、様々なストレス下に置かれた状況でこの呼吸法を咄嗟に出来る人というのは少ないように思います。
今回は、天田さんと一緒に筋トレをやりながらこの呼吸法の練習をしてみました。「鼻から吸って、口から吐く」を意識すると、普段全く運動をしていない私でも、案外すんなりと筋トレができることに驚きました(膝ついてるけど)。試しに一度呼吸を止めて腹筋をしてみましたが、とてもキツく感じました。でもこの感覚は、学生時代の体力測定のときの感覚と一緒だったんです。普段みなさんは腕立てや腹筋をするときに無意識で息を止めていませんか? 明日から呼吸に意識を向けてみることで、少し楽に筋トレができるかもしれません。
筋トレをするときに体を動かすことに集中してしまうように、人は何かに集中して周りが見えなくなっていることがよくあります。しかしその行為が、自分で自分を追い込んでしまっているという場合もあると天田さんは言います。そんなときに落ち着いて呼吸をし、視野を広げてみる。それがシステマの基本だということです。
そうこうしている間にレッスンの開始時間が近づき、生徒さんが徐々に集まってきました。後編では生徒さんと一緒に参加させていただいたクラスの様子をお伝えしていきたいと思います。お楽しみに!