スポーツ用品店では高額器具も販売
一番人気のスポーツはバドミントン
インドネシアの首都ジャカルタ。この夏はアジア大会が行なわれ大盛り上がりだった。テレビで連日放送されていた水泳や陸上競技の様子を観た人も多いだろう。ふた昔前は日本を除けば、軒並み途上国だったこの地域も、多くの国が経済成長を遂げ、今では世界で一番元気な大陸となっている。とくに東南アジア地域は、かつての日本の高度成長を思わせる活気にあふれ、その中でも2億5000万人を擁する一番の人口大国であるインドネシア、ジャカルタは建設ラッシュに沸いている。
豊かさとスポーツに親和性があることは言うまでもないだろう。多くの人々が日々の生活に精一杯という、かつての状況を脱したこの国では、市民の間にスポーツが浸透してきている。というわけで、この国のスポーツ事情を知るべく、まずはジャカルタ市内のスポーツ用品店へ。その土地の人気スポーツを知るためには、ここに行くのが一番だ。
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ジャカルタは、コタと呼ばれる港に面した旧市街の南にチャイナタウンがあり、そのさらに南には、延々と高層ビルの立ち並ぶ新市街が広がっている。チャイナタウンと新市街とをへだてるマンガ・ブサールという通りは、まだまだ下町情緒があふれているが、この通りにも1軒のスポーツ店がある。店内の中心から奥にかけては、フィットネスジムに装備されているようなウエイトマシンやルームランナー、そしてバランスボールが並んでいる。
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高度成長を続けるこの国にあって、豊かになった結果、人々の生活様式がデスクワークの中心のストレスフルなものになってきていることがうかがえる。それにしても、こんな高価なものがスポーツ用品店で一番目立つとは、インドネシアのホワイトカラーたちはもはや日本の庶民よりよほど豊かな生活を送っているようだ。
店員さんに、インドネシアの人気スポーツを聞いてみた。即座に帰ってきた答えは、1位バドミントン、2位サッカー、3位バスケットボールとのこと。なるほど、入口から奥のレジまでの壁には一面ラケットが飾られている。知る人ぞ知る、この国は世界有数のバドミントン大国なのだ。世界最高峰のトーナメントシリーズ、BWFスーパーシリーズの中でもとくに重要な大会である「プレミア」のひとつ、インドネシア・オープンが開かれていることを知っている人も多いだろう。テニスで言えば、グランドスラムに当たるようなトーナメントがこの国で行なわれるのだ。ちなみに、今年の大会では、日本のエース、桃田賢斗が男子シングルスで優勝している。その人気ぶりは、今回のアジア大会でももちろん人気を博し、物価が日本の半分ほどのこの国でチケットが5000円ほどもすることからもその白熱ぶりがうかがえる。
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ともかく、年々豊かになり、それにともない生活様式もビジーになっているジャカルタにあって、市民にとってスポーツは健康維持に不可欠なものになっている。夕方ともなると、ちょっとした公園の周囲の道路にはジョギングやサイクリングをしている人々の姿を目にするし、公園の中には、運動器具が設置されているところもある。
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今回の取材でも、自転車競技場と野球のサブ球場のあるラワマングンのスポーツセンターには入口の横に、数種類の運動器具が備え付けられていた。この運動器具は、発展途上国の公園でよく見かけるもので、外資系のスポンサーによって寄付されたもののようだが、これを見るにつけ、よく言えばのんびりしていたアジアの国々の人々の生活も、次第に我々の住む先進国のせわしいそれに近づいていることを実感させられるのであった。
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取材&文&撮影/阿佐智