相澤隼人【注目ルーキーの覚悟②】2017年日本ジュニアボディビル選手権大会優勝者




今年の春に大学進学したばかりの相澤隼人選手だが、その名はすでにボディビル界に収まらぬほど大きな反響をとどろかせている。今回はそんな相澤選手の普段のトレーニング内容と、進学した日本体育大学での活動について直撃。

ノートをこまめにつけながらのトレーニング
シーズン中の相澤選手の日常とは?

――全日本学生ボディビル選手権大会に向けて、仕上がりは順調ですか。

相澤:順調と言えば順調かもしれないですけど、だいたいこの時期(大会の約1ヵ月前)になると毎年絞れていないなと感じるので、ちょっと焦りはあります。去年の同じ時期の写真と見比べて、どうなのかなと。体重も去年のこの時期は70kgとか71kgだったんですけど、今は72、73kgあるので。筋量で増えているといいんですけど、それが単純に脂肪だとしたらあまりよくないなと思います。焦りは毎年感じるんですけどね。

――トレーニングは週に何回行なっているのでしょうか。

相澤:週6~7回ですね。何も予定が入っていない週は、基本的にほぼ毎日やっています。

――1週間で鍛える部位のサイクルがあると思いますが、何種類あるんですか。

相澤:5種類あります。今日が腕だとしたら、明日は脚、その次に胸、背中、肩です。1日あたり筋力トレーニングが2時間、有酸素運動が30分くらいですね。

――扱う重量は徐々に重くしていくんですか。

相澤:基本的には重いところから始めて、既定の回数ができなくなったら下げていくイメージですね。感覚があまりよくないところは先に温めるために、あまり重さをかけずに15回くらいやって、そこからどんどん重さを上げていって、回数を少なくして終わりということもあります。

――ノートもこまめにつけていましたね。

相澤:前回より上がったか上がっていないかとか、重いのを扱えたか扱えていないか。一種の目安ですよね。たとえばベンチプレス100kg×5回を1年間やったって、大きくならないんですよ。107.5kgを5回できるようにするとか、110kgを5回できるように伸ばしていかないと、筋肉って大きくならないんです。

――筋肉を大きくする上で、才能のようなものはあるのでしょうか。

相澤:なくはないんじゃないですか? 自分は普通だと思っています。才能というか、運動神経の問題ですよね。神経伝達がうまい人とうまくない人がいるので。よく言うじゃないですか。子どもの頃にいろいろなスポーツをやらせたほうが運動神経がよくなるって。たとえば子どもの頃から水泳しかやってこなかった人は、水泳はすごいけどそれ以外は苦手とか。何でもできる人のほうがボディビルは向いているのかなと思います。

――なるほど。最後に有酸素運動を入れるのはどんな効果があるんですか。

相澤:単純に減量ですね。明日の分の筋力トレーニングはできないので、有酸素運動が一番効率がいいんですよ。

――ランニングマシンを使ってウォーキングを行なっていましたが、走るわけではないんですね。

相澤:そうですね。運動量を稼ぐためにやっていることで、心肺機能を高めたいわけじゃないので。

――減量はいつから始めたのでしょうか。

相澤:4月の半ばくらいなので、学生選手権から逆算するとちょうど6ヵ月前くらいですね。

――そんなに早くから取り組むんですね。

相澤:月何kgペースとかで、そんなに急激には落とさないですからね。高1、高2は7月から減量を始めたんですけど、高3の時はひとつ階級を上げたので、ちょっと早めて5月くらいからやりました。自分は高校まで柔道をやっていたんですけど、柔道の減量は簡単なんですよ。計量の一瞬に体重を切っていればいいだけなので。5kgくらいだったら2週間で落ちますね。計量の前日にサウナで2kgくらい落としたこともありました。

――ボディビルは体重を落とすことだけが目的ではないんですものね。

相澤:数字じゃないんですよね、見た目なんですよ。筋量を残しつつ、脂肪だけを削ぎ落とさなければいけないので。

――当然、食事制限もされていると思いますが、時にはラーメンなど好きなものを食べるいわゆるチートデーを設けることもありますか。

相澤:基本的にはいれないですけど、減量を半年やっていると食べたくなることもあります。減量を始めた4月から今までで、3回くらいは食べました。

――5ヵ月でたったの3回ですか。

相澤:ただ、普段から量を結構食べていますからね。カロリーも成人男性の平均以上、3000kcalくらい摂っています。

――それは意外です。

相澤:カロリーを落とすとどうしてもパワーが出なくなってしまうので、極力落とさずに運動量を上げてカロリーを消費するのがいいのかなと思っています。炭水化物も普通に摂りますよ。今朝だって白米を450g食べてきましたし、この後(トレーニング後)も弁当を250g食べます。

――ササミやブロッコリーなど、タンパク質だけに特化した食事を摂っているのかと思っていました。

相澤:だいたいみんなそう思うんですよ。そんなことはないです。しっかり白米も食べて健康的な食事を心がけています。

大学に進学してからの変化は?

――今春から日体大に進学しましたが、高校時代から変わったことはありますか。

相澤:高校の時より移動時間が減ったので、自由な時間は増えました。あとは、自分が本当に学びたいことを学べるのもいいですね。普通に国語とか英語もあるんですけど、機能解剖学とかスポーツ生理学とか、スポーツの歴史みたいな授業もあるので。生命科学ではどういう配列でペプチドが並んでいるとか、そういうのもおもしろいですね。

――岡田隆先生が率いる日体大バーベルクラブにも所属されていますが、どのような活動をされているのでしょうか。

相澤:部活ではあるんですけど、言ってしまえばボディビルって個人競技じゃないですか。みんなそれぞれ曜日ごとのルーティンが違って、週何回オフを取るというのも違うので、全員一緒にトレーニングをすることは基本的にないんですよ。週1回ミーティングという形で集まって、大会前だと減量の具合を見たりポージング練習をしたりはします。

――岡田先生から教わった中で、とくに勉強になったことはありますか。

相澤:先日、椎間板ヘルニアからくる坐骨神経痛をやってしまって、便秘になってしまったんです。毎朝体重が増えると、メンタルがやられるんですよ。岡田先生に相談したら、最近話題になっているバーリーマックスを紹介されて、「1日何グラム摂取するといいよ」と教えていただきました。それを食べたら問題が解消されて、ストレスがなくなったんです。減量をしていく上で体重は絶対減るものなので、あれ、何で減らないんだろう?となるんですよ。それがストレスになって自律神経が乱れて、精神的にも不安定になるんです。

★大学に進学してから、より一層ボディビルに集中できる環境が整ったという相澤選手。次回は、そんな相澤選手の今後の活動についても、お聞きします。

取材・文/伊藤翼 撮影/神田勲