Tリーグとセンター分け少年【編集部員コラム「気まぐれVITUP!」】by編集I




みなさまこんにちは。編集Iです。性別は野郎です。このような形でコラムを書くのは初となります。自分は以前、当サイトにおいて「目指せシックスパック」という3ヵ月で腹筋を割る企画に挑戦しました。当時は触れませんでしたが、というより企画の根幹に関わることなので触れるわけにはいきませんでしたが、今だから正直に書きます。途中、うっすら腹筋が割れたり元に戻ったり……という時期を経由しつつ、最終的には体が赤くなっただけという結果に終わりました。

赤い理由は、集大成となるAfterの写真撮影をする前々日に、ふと色黒のほうが雰囲気が出ると考え、人生初の日サロに挑戦したからです。考えればわかりそうなものですが、1回の日サロでいきなり黒くなるわけもなく、焼いた後はのたうち回るくらい体がヒリヒリして、タコさんウインナーのように赤く仕上がった次第です。トレーナーさんの名誉のために言っておくと、体があまり変化しなかったのは自分が筋トレを怠ったことがすべての原因です。申し訳ございませんでした。

前置きが長くなりましたが、今回は先日、当サイトの佐久間編集長がコラムのテーマにした卓球の新リーグ「T.LEAGUE」(Tリーグ)について書きます。10月24日、両国国技館で行なわれたTリーグ開幕戦を佐久間編集長と観戦してきました。

自分は中学時代、卓球部に所属していました(高校では入学直後の数ヵ月だけやっていました)。僕が中高生だった90年代中盤~後半は「運動部の中の文化部」などと揶揄され、卓球=暗いというのが世間のイメージだったように思います。そして、その時代はしばらく続きました。初対面の人に「何かスポーツはやっていましたか?」と聞かれた際は、「はい。剣道を」(実際に小学生の6年間習っていました)や、「バスケを少々」(小学5年生の頃、クラブで1年やっていたからウソではないよね)、「たしなむ程度にテニスを」(大学のテニサーに入っていたというだけでもアレなのに、テニスもせずコートのベンチで東スポを広げていたのは僕の黒歴史です)などと返答し、本来のメインコンテンツと言うべき「卓球」というワードを口にすることをはばかられるような心境でした。

卓球経験者ということで、これまで何度か卓球の書籍やムックに編集者やライターとして携わらせてもらいました。著者の先生方の情熱に触れ、当時は気づけなかった卓球のおもしろさや奥深さを教えていただくたびに、卓球に誇りを持てなかった過去の自分を恥じました。そして取材を重ねるにつれて、僕の中で卓球への思い入れはどんどん大きくなっていきました。

時は流れ、卓球のイメージはすっかり変わりました。まさか卓球を題材とした映画がつくられ、しかもガッキーが主演を務めるなんて……。聞くところによれば現在、中学校では卓球部の入部希望者が一、二を争うほど多いようです。人気スポーツとなった背景にはさまざまな理由が考えられますが、一番はやはり国際大会で日本が結果を残せるようになったことでしょう。2012年のロンドン五輪では女子団体で銀メダルを獲得し、オリンピックの卓球競技では初めて日本が表彰台に立ちました。2016年のリオ五輪は男女ともに団体のメダルを獲得し、水谷隼選手はシングルスで銅メダルに輝いています。

10代の若い選手の活躍が多く見られるのも卓球の特徴ですが、大きな転機としては、日本オリンピック委員会(JOC)がエリートアカデミーを創設し、ジュニア世代の育成を強化したことが挙げられます。2008年に開校し、今年で10周年を迎えるこの組織はこれまで多くの有望株を輩出し、今年1月に大会史上最年少の14歳で全日本選手権を制した張本智和選手は現在、エリートアカデミーに所属しています。

エリートアカデミーに負けじと学校やクラブチームがより育成に力を入れたことが相乗効果となり、日本の競技レベルは飛躍的に向上しました。国際大会で結果を残すようになれば、メディアに取り上げられる機会も必然的に増えます。こうして、卓球がいかにおもしろくハードなスポーツであるかが世間に浸透していったのでしょう。今やテレビ番組で卓球選手が他競技のアスリートと肩を並べていても、何の違和感もありません。魅力のあるソフトがあったからこそ、Tリーグ構想というハードも生まれたのだと思います。

両国駅に到着すると、国技館への道すがら号外が配られていました。注目度の高さをヒシヒシと感じます。そして、開場前からグッズ売り場には長蛇の列が。埼玉県出身の僕は、その場で埼玉にフランチャイズを置く男子チーム「T.T彩たま」(ネーミングがいかにも埼玉っぽくていい)を応援することに決めました。さっそくレプリカユニフォームの購入を試みましたが、Lサイズが品切れで断念。ですが、その他にも購買意欲をそそる魅力的なグッズがたくさん用意されています。読み応えのあるオフィシャルガイドブック、「球に恋するちょこせん」(草加せんべいにホワイトチョコがコーティングしてあります)、プレイヤーズ缶バッチを購入しました。

缶バッチは開封するまで誰が出るかわかりません。男女全8チームから、それぞれを代表する選手が入っているとのこと。同じ選手がダブった時はどうすればいいんだろう……といらぬ心配をしながら封を開けると、岡山リベッツの上田仁選手でした。Tたま(略してみました)と並行して、これから上田選手も注目することにします。

ずいぶんとはしゃいでいるな、という印象をお持ちになるかもしれません。でも、そうやって楽しもうとすることが大事だと思うのです。どれだけレベルの高い試合が繰り広げられても、それを楽しむ観客がいなければプロスポーツは成立しません。将来、Tリーグがプロ野球やJリーグのようになっていくために、みんなで盛り上げていきましょう。

開会式のセレモニーは圧巻の一言でした。まずセットが超豪華です。カーテンで覆われていた卓球台が姿を現わし、生オーケストラの演奏に乗って各チームの代表選手がひとりずつ紹介されていきます。色とりどりのライトアップ。噴射される白煙……。私事で恐縮ですが、中学時代、部室のすぐ隣には焼却炉があり、絶え間なくモクモクと吐き出される黒煙によって、僕の卓球部での2年半は常に焦げ臭さに包まれていました。華やかなセレモニーを眺めていると、なぜだか当時の匂いが鼻先によみがえり、少し込み上げるものがありました。

この日は、T.T彩たまVS木下マイスター東京という男子の試合が行なわれました。Tたまは吉村真晴選手を中心に海外の強豪も顔を揃え、木下は水谷選手、張本選手、大島祐哉選手、松平健太選手など日本代表クラスを擁する銀河系のスター軍団です。各チームには世界ランキング一桁、またはそれに準ずる選手が少なくとも1名は所属しています。

選手のユニフォームに背番号がついているのも、これまでになかった試みです。選手自身が希望した番号とのことですが、どんな思いでつけたのだろうと想像する楽しみもあります。ちなみに張本選手は17番。野球好きな張本選手のことだから、おそらく大谷翔平選手にインスパイアされたのではないかというのが僕の見解だったのですが、後で知ったところによると、東京オリンピックが行なわれる2020年に17歳を迎えるから、という理由のようです。ぐうの音も出ないほど立派な考えを持った中学生です。張本選手、おじさんの考察が浅くてすみません。

第1試合のダブルスが始まったばかりの時間帯は、観客も応援の仕方や楽しみ方を模索しているような印象を受けましたが、トップ選手たちの激しいラリーの応酬で自然に大歓声が起こり、会場は徐々に白熱していきます。ダブルス1試合、シングルス3試合の計4試合が行なわれ、木下が3-1で勝利を収めました(2-2の場合のみ5試合目が行なわれます)。卓球は実際にプレーしておもしろいスポーツであることはもちろんですが、見てもおもしろいスポーツだとあらためて実感しました。Tリーグはこれまでの卓球観戦とは異なりアルコールもOKなので、次はビールを飲みながら観戦したいと思います。

僕には年に一度、実家に帰省する正月に集まってお酒を飲む卓球部時代の同級生3人がいます。Tリーグのことを話したら、あいつらどんな反応するだろう。来年の正月が今から楽しみです。