【後編】安全・効果的・効率的なトレーニングの方法とは? 「筋肉体操」でおなじみ谷本道哉氏セミナーをレポート




今回もSAWAKI GYM ACADEMYにて行われた、谷本道哉氏によるセミナー「自重トレとウェイトトレの効果を上げる~筋肥大の生理学とバイオメカニクス~」の模様をお届けする。

前回は座学セッションの前半の模様をレポートしたが、今回はその続き。谷本氏が筋トレブームのなかで“よくない”ところがあると言うのがベンチプレスだという。前回お伝えしたように、「重さにこだわりすぎ」ということもあるが、ある勘違いがあるようだ。

「ベンチプレスでは、ワイドグリップは大胸筋、ナローグリップは上腕三頭筋に効くとよく言われますが、極端に広・狭い場合を除いては、実は結構そうでもないんです。どちらのグリップでも、両方の筋肉をめいっぱい使うことは可能です」

実際の筋電図データが紹介されたが、ワイドでもナローでも大胸筋と上腕三頭筋の筋活動の割合に差はみられない(これはおどろき!)。その理由をベンチプレス選手の力発揮ベクトルを示す論文を引用してひも解いていく。

その説明のなかでは、基本力学の図を使ってトルク計算を行い、負荷がかかる仕組みをわかりやすく解説。ベンチプレスはもちろん、スクワットやダンベルプレスなどにも応用できる原理をセミナー参加者たちは学んだ。

ちなみに、谷本氏のおすすめするベンチプレスの方法は“パイネベンチ”とのこと。

「プロ野球のアルフレド・デスパイネ選手(福岡ソフトバンクホークス)がやっているベンチプレスを、“パイネベンチ”と呼んでいます。手幅は、肩幅よりちょっと広いだけ。そこから少し内向きに押すイメージで挙げていくんです。このフォームでは扱う重量が少し下がりますが。大胸筋にも、上腕三頭筋にもすごく効きます」

約90分にわたる座学セッションが終了すると、休憩をはさみ、実技セッションへ。

座学で学んだ基本をベースに、腕立て伏せ、スクワット、背筋、腹筋の4種目の自重トレーニングを参加者全員で実施。「筋肉体操」で行なっていたような短時間・10回程度でも“効く”方法により、参加者からは悲鳴が上がるほどであった。

谷本氏の「あと5回しかできない!」という独特のフレーズでの声掛けもあり、会場はさながら「筋肉体操」の現場のようであった。

最後は質疑応答を行ない、セミナーは終了。今回の参加者は普段からトレーニングを行なっている方やトレーナーなど、年齢も性別もさまざま。バイオメカニクスや生理学と聞くとやや難しそうに思えるが、谷本氏のわかりやすい解説と実技により安全かつ効率的なトレーニングについて学べる非常に実りのあるセミナーとなり、3時間という長丁場も瞬く間にすぎていった。

SAWAKI GYM ACADEMYではこの他にもさまざまなセミナーを開催しているので、興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
(詳細は⇒こちら

≪谷本道哉氏プロフィール》
1972年、静岡県生まれ。近畿大学生物理工学部人間環境デザイン工学科准教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は身体運動科学、筋生理学。スポーツ・トレーニング、健康運動指導の現場に精通した研究者であることをモットーとする。

取材・文/木村雄大 撮影/神田勲
取材協力/パーソナルトレーニングスタジオSAWAKI GYM(HP:http://sawakigym.com/