本サイトでは、これまで数多くのトップ選手を輩出し続けている新極真会の強さの秘密を探るべく、11月16日(金)~11月18日(日)にかけて、山梨県南都留郡鳴沢村にある「富士緑の休暇村」で行なわれた若手選手育成プログラム「ユース・ジャパン強化合宿」を取材してきました。
2泊3日、合計6回の稽古
400名を超える参加者は組手競技や型競技、年代ごとにグループ分けされ、体育館、武道場、グラウンドなどの施設で1回2~3時間の稽古を行ないます。稽古は3日間で合計6回(初日は午後、2日目は早朝、午前、午後、最終日は早朝、午前)。ここからはハードな合宿の詳細をお伝えします。
合宿の朝は6時に始まる!
早朝稽古は、高校生以上のメンバーと来年5月に行なわれる一般部の全日本大会へ出場予定の中学3年生のみが参加します。屋内とはいえ、時期は11月中旬。早朝の富士のふもとは霜が降りるほど厳しい寒さに見舞われます。しかし、午前5時40分にはすでに全員が集まり、「新極真会、ファイト!」という掛け声に合わせてジョギングで体を温めていました。その後は男女6名が1チームとなり、リレー形式で壁タッチのスピードを競い合いました。続いて、男女階級別に分かれて腹打ちを行ないます。
テクニックセミナーでは
現役のチャンピオンが直接指導
この合宿一番の注目は、何と言っても新極真会を代表する現役のチャンピオンたちもコーチを務めていることです。普段は選手として活躍する彼らも、ここでは10代の選手たちに惜しげもなくテクニックを教示していきます。
今回コーチを務めた現役のチャンピオンたちは、ほとんどがユースの卒業生です。かつては参加者として汗を流した選手たちが、チャンピオンとなってユース合宿に帰ってくる。こうして、新極真会の伝統は脈々と受け継がれていきます。
ハードな組手で鍛えられる心の強さ
チャンピオンからテクニックを教わった後は、組手(スパーリング)を行なって実戦での活かし方を確認していきます。組手は技を実戦レベルで体得していく上で重要ですが、試合で勝ち切るために必要な体力、精神力を鍛える上でも非常に重要な意味を持っています。
「試合の最後に競り負けてしまう選手は、つねに競り負けることが多い。普段の稽古からそれが決勝戦だと思って、競り合いで勝てる選手になってください」と、緑代表は話します。
約1分間にわたって打ち合い、相手を代え、ふたたび1分間の打ち合いを開始します。それを30~40分にわたって繰り返します。全国から集まるライバルたちとハイレベルな稽古を行なえるのは、選手たちにとって得難い刺激となることでしょう。
学年別タイムレースでも
ライバル意識を燃やす!
合宿中に1度行なわれた「クラス別中距離競争」では男女が学年別に分かれ、ランニングトラック2周(約800m)を走ってタイムを計測し競い合います。競争は熾烈で、どの参加者も最後まで必死に走り抜きました。
ユース合宿では友情も育まれる
参加者たちは普段、全国にある別々の道場で稽古をしており、顔を合わせる機会は多くありません。だからこそ、年に一度のこの合宿は貴重です。合宿に参加しているメンバーは、ライバルであると同時に仲間。本気でぶつかり合い、つらい稽古を乗り越え、寝食をともにすることで、自然と仲間意識が芽生えていきます。日本全国に一生の友ができることも、この合宿の意義と言えるでしょう。
精神面の成長もテーマ
この合宿を通じて養われるのは、空手の強さだけではありません。「心極める」を理念に掲げる新極真会では、精神的な成長もこの合宿の重要なテーマのひとつです。
緑代表は、2日目の夜に行なわれた講話で「頭は低く、目は高く、口慎んで、心広く、孝を原点とし、他を益す」という言葉を紹介しました。これは極真空手の創始者・大山総裁が確立した極真の精神であり、「謙虚で、目標は高く、悪口を言わず、心を広く持って、親孝行の気持ちを忘れずに、社会に貢献するような人間を目指す」という意味です。
緑代表はその中でも「孝を原点とし」が最も大切だと語り、「ご両親への感謝の気持ちを忘れてはいけません。そして、感謝の気持ちは言葉にして伝えなければ意味がありません」と話しました。感謝の気持ちを持っていても、それが伝わらなければ相手にとっては持っていないのと同じです。一見、簡単なことのようですが、それを実行できている人は案外少ないのではないでしょうか。
ユース合宿の参加者たちは、小学生であっても非常に礼儀正しかったのが印象的でした。自分のものだけではなく他人の靴も揃え、挨拶をする時は荷物を下ろして立ち止まり、握手は両手で行ないます。遅くとも稽古が始まる15分前には集合し、準備を整えます。こういった生活態度に、新極真会の真の強さが垣間見えてきます。
また、ここでの行ないを合宿が終わってからも継続できるかが重要なポイントです。自分の道場に帰った時に、合宿に参加できなかった選手たちに心構えを伝えていくのも、参加者たちの重要な任務と言えるでしょう。
気がつけば、あっという間に過ぎた2泊3日の合宿。一回りも二回りも成長を遂げたユース選手たちは、出発時よりもたくましい顔つきになって帰途につきました。
近い将来、今合宿の参加者の中から世界チャンピオンが誕生するかもしれません。選手たちの今後の活躍を、楽しみに見守っていきたいと思います。