欅坂46を振り付ける世界的ダンサー、TAKAHIROが語った「筋肉」と「骨」のこと

世界的ダンサーのTAKAHIROが、2月24日、東京・南青山で新刊『ゼロは最強』(光文社)の発売を記念したトークイベントに登場。日々の創作の「秘密」について余すところなく語り、会場は拍手と笑いに包まれた。
同イベントは3人の“天才”舞踊家が集結してのトークライブ形式。会場となったスパイラルホールには“異種格闘技的”鼎談を聞きに300人近い観客が集まった。

撮影・光文社写真室

「舞踊は私にとっては酸素と同じ。踊りがなけりゃ生きていけないと思います」

こう胸を張るのは1人目の天才、日本舞踊「梅津流」家元・梅津貴昶。これまで約650曲もの歌舞伎舞踊のほか、ヨーヨーマなどのクラシック楽曲にも振り付けをしてきた梅津は、中村勘三郎や坂東三津五郎といった歌舞伎俳優はもちろん、東山紀之、滝沢秀明らジャニーズのタレントからも絶大な信頼を寄せられている。

「僕はダンスが大好きで、お二人に比べたらまだキャリアは短いんですが、18歳で始めて20年経っても好きなものは好きで。そんなダンス大好き人間です」

こう言って笑顔をのぞかせた2人目の天才が、人気アイドルグループ「欅坂46」のメンバーから「TAKAHIRO先生」と慕われるプロダンサー・TAKAHIRO。欅坂46のデビューの時から振り付けを担当、その世界観を作り上げてきた彼は、かつて『News week』誌の「世界が尊敬する日本人100人」にも選出され、あのマドンナのワールドツアーでステージダンサーとしても活躍した実績を持つ。

そして、この2人の天才をナビゲートする3人目の天才が、バレエダンサー・首藤康之。伝説的な舞踊家で振付家のモーリス・ベジャールにその才能を高く評価され、長年、日本バレエ界をけん引し、演劇の舞台にも挑戦するなど、年々表現の境地を拡げ続けている。

撮影・光文社写真室

自分の肉体だけが唯一絶対の表現手段という共通項を持った3人のトークは、徐々に熱を帯び、いつしか化学変化を引き起こしていった。

「ストリートダンスの場合はスタジオで、アップ、ストレッチ、筋トレをした後に、必ず『リズムトレーニング』というエクササイズをします。ノンストップで音楽を流して、いろんなステップをずっとやり続けていくというもので……自分の中のいっぱいある引き出しから、これまでやった全部のステップを引っ張り出して、一度バラバラにして、もう一回パズルのように組み立てる、そういうトレーニングを欠かさずやってます」

TAKAHIROが日々のルーティンについて話せば、その言葉に呼応するかのように2年前、脳腫瘍の手術を経験し、長い闘病生活を乗り越えこの春、歌舞伎座で踊りの会を開催する梅津も続く。

「病院のお医者さまからお聞きしたんですけどね。脳の次に記憶力がいいのは筋肉なんですって。ですから鍛えれば鍛えるほど、筋肉は思い出す力が増すそうですよ。私はその言葉を信じて、筋肉の記憶を頼りに、ふたたび歌舞伎座の舞台に立つんです」

梅津の言葉に、首藤は深く頷いて「僕の勝手なイメージかもしれないんですけど」と前置きしながら、あらためて梅津にこう語りかけた。

「歌舞伎俳優の皆さんって、あまりウォーミングアップもせずに、急に跳んだりしますよね。演目の準備期間も前月の舞台の千秋楽から、その次の初日まで驚くほど短い。それでも、きちんと毎月毎月、舞台を勤めていらっしゃる。それは本当にすごいなと思うんです」

梅津も「日本舞踊や歌舞伎の欠点はウォーミングアップの時間が少ないことよね」と首藤の言葉に同調し、さらにこう続けた。

「演じるお役については、長年、あてがわれた役柄、その演目の表現していることを正しく考えながら身体をずっと使っていってるから、それがいつしか出来ちゃうようになってるの。身体が、筋肉がそうなっていくのよ」

ここで、2人のやりとりを聞いていたTAKAHIROから絶妙な一言が。

「そうですよね。だって、アフリカのライオンが獲物を狙いに行く時に、まずはストレッチしてから、なんてないですもんね(笑)」

その言葉に、会場全体が大きな笑いに包まれた。

撮影・光文社写真室

異口同音「踊りが生活の中心」と語る3人。梅津は「朝、ベッドから身体を起こす瞬間から踊りを意識している」と話す。

「もうね、異常ですからね、今日は『かさね』で起きてやろうとかね、明日は『勧進帳』で起きようか、とかって(笑)。それで、朝10分でも踊らないと、心身が目覚めないというのか、いやなのよね」

それは首藤も同じなようで。「僕もそう、まったく同じなんです」と笑う。

「朝、スタジオに行ってレッスンをしないと自分に自信が持てないというか、人に会うこともできない。今日も、起きた瞬間は、イベントのナビゲーターなんて無理だ、と思ってました。それがレッスンをしたことで『よし、初司会がんばろう!』という気持ちになれた」

日本舞踊とバレエ、ジャンルはまったく違う梅津、首藤だが「常に丹田、身体のセンターを意識する」というのも同じだという。一方、TAKAHIROはどうか。首藤はこんな質問をぶつけた。

「TAKAHIROさんは丹田とか、筋肉とか、生活の中で意識してることってあります? 僕には、すごく骨を意識してるんじゃないかというふう見えるんですが……」

この質問に観客席は「え、骨?」という空気。ところが、当のTAKAHIROはニッコリ微笑んで当然のことと言わんばかりに「意識してますよ」。

「骨を最強の筋肉として使うっていう感覚があって。たとえば立ち上がるときに『よいしょ』って立つと時間もかかっちゃうし筋肉を使うと大変。でも、この足の骨を筋肉として見立ててやると、バンッと、すぐ立てるんです。なので、いかに骨を骨として終わらせず筋肉のように意識するかでパフォーマンスも変わってくるんです」

「へぇ〜」と客席がどよめく中、梅津がこんな風に言葉を継いだ。

「筋肉を着てるのよね、骨が。人間ってさまざまな骨があって、その全部が筋肉を着て、その上に綺麗な着物や衣装を着て。それで私たち、踊ってる、そういうことなのよね」

年長の天才の言葉に、ただただ深く頷く若き2人の天才……舞踊を極めた天才だけが感じとれる“舞台裏”を、垣間見ることができたトークイベントは、割れんばかりの拍手で幕を閉じた。