大日本プロレスの岡林裕二選手はウエイトリフティングからプロレスに転身し、屈強な肉体とパワーみなぎるファイトで多くのファンの支持を集めている。プロレス界屈指の怪力レスラーに、ウエイトリフティング時代のトレーニング、そして現在のトレーニングや考え方について語ってもらった。
プロレス入門、3カ月で20キロ増量
入院中もシャワー室でスクワット
――自衛隊のウエイトリフティング部はどのような練習をするのですか?
岡林:練習は朝9時からで、午前中のトレーニングはサーキットとか走ったりとか、基礎体力をつけるトレーニングです。11時までトレーニングをして12時から昼食。午後のトレーニングは14時からで、ここでは種目の練習です。スナッチをやって、ジャークをやって、補助種目のデッドリフト、スクワット。他には肩のトレーニングなどをやって、17時くらいまで終了です。
――それを毎日?
岡林:日曜日と水曜日が休みです。あとはパーセンテージが違うんです。たとえば月曜日にマックスでやったら、火曜日は30~40パーセントまでドンと落とす。水曜日が休みで、木曜日は80パーセントぐらいまで上げて終わり。金曜日は50パーセントぐらいでやって、土曜日はスクワットとデッドリフトだけというような感じで、週に1回マックスでやる日をつくっていたような感じです。
――結局、オリンピックの夢が破れてプロレスラーに転身したのですよね?
岡林:最後の全日本選手権では強い大学生がたくさん出てきて6位に終わりました。監督からも「そろそろ部隊に戻るか」と言われて、一度は部隊に戻りました。でも、やっぱり何かスポーツをやりたかったんです。そうしたなかで何気なく見ていたプロレス雑誌に、地元の高知の明徳義塾からプロレス界に入った関本大介さんが載っていて、自分もこれだと思ったんです。
――プロレスなら鍛えてきた体を生かせますからね。
岡林:はい。体力はあるので基礎体力トレーニングは全然問題なかったです。何をやるにしても力がないとダメじゃないですか。体の力をつけるという意味でも、ハイクリーンとかジャークの動作は、けっこう大事かなと思っています。ハイクリーンは、いろいろなスポーツの補助種目として取り入れられているんです。自分もこれは続けようと思って今でも続けていますし、後輩たちにもハイクリーンをやるように教えています。
――ハイクリーンがそれだけいろいろなスポーツで重要視される理由はどこにあるのでしょうか?
岡林:上半身と下半身の連動性ですかね。投げたりするのって、下半身だけでも上半身だけでもできないし、連動が大事になります。あとは体幹も必要になってくるので、ハイクリーンは欠かせません。
――現在は150試合以上やっていると思いますが、そのなかでトレーニングはどのようにこなしているのですか?
岡林:プロレスは他のスポーツと違ってまとまったオフがないので、試合前に必ずウエイトもやりますし、ジャンプやダッシュの息上げ系のトレーニングもやっています。巡業のときもパワーブロック一式とベンチ台はあるので、それがあれば十分です。
――試合がないときのトレーニングは?
岡林:ウエイトトレーニングを足、胸、背中、肩、腕の5分割でやっています。
――レスラーは体の大きさも大事ですが、食事面で気をつけていることはありますか?
岡林:自分は120キロあるのでタンパク質を300グラムぐらいは摂らないといけません。プロテインやコンビニでサラダチキンを買ったり、食事でもお肉や魚を摂るようにして、300グラム摂るように意識しています。
――プロテインは一日どれくらい飲むのですか?
岡林:一日4回です。朝起きてからと、トレーニング後、夕食後、それから寝る前の4回。ただ、巡業に行くと同じようにはできないときもあるので、コンビニで売っているプロテインドリンクで補ったりもしています。気を付けないと痩せてしまうので、意識的にタンパク質やエネルギーを摂取するようにしています。
――もともとの体重はどれくらいだったのですか?
岡林:入門したときは80キロだったのですが、デビューまでの3カ月で100キロまで増やしました。
――それはどのように?
岡林:2時間ぐらい時間をかけて一食5合ご飯を食べていました。一日三食で15合。まだ20代だったのでたくさん食べられましたね。背が低いので横に大きくしようと思ってやっていました。
――それはすごい。では岡林選手がトレーニングで一番心掛けていることはどんなことですか?
岡林:やっぱり意識することじゃないですか。みんなやっていることは同じだと思うんですけど、筋肉の収縮を意識するとか、姿勢を意識するとか、大きいことも細かいことも意識する。それが大事だと思います。
――ウエイトトレーニングはやっぱり好きですか?
岡林:好きですね。大好き。中3でベンチを100キロ上げたときから20年以上ずっと大好きです。
――昨年は肩のケガで欠場していて、トレーニングをできない時期もあったと思います。
岡林:入院して手術をして3日目ぐらいからシャワーを浴びられるんです。腕は動かせないですけど、シャワー室のカギを閉めて、そこでスクワットをやっていましたね。
――入院中もできるトレーニングはするんですね。
岡林:はい。自分がシャワー室でフンフン言ってるので、看護師さんが「岡林さん、大丈夫ですか?」って心配して来たんですけど、「大丈夫です」って言いながらフンフンしているので、次の日からその看護師さんは自分の病室に来なくなりました(笑)。
――怪しい人だと思われたんですね(苦笑)。ちなみに一番好きな種目は?
岡林:スクワットですね。デッドリフトも好きなんですけど、実は足が一番好きです。自衛隊のときはフルスクワットでマックス280キロ上げました。プロレスに入ってからはケガをしてはいけないので、そこまでの重量ではやらなくなりました。
――ウエイトリフティングからプロレスへと転身して競技生活を続けています。トレーニングとの付き合い方は今後も変わりませんか?
岡林:トレーニングはずっと続けていくでしょうね。たぶんやめないです。ずっとゴツイままでいたいんですよ。トレーニングってきっかけだと思うんですよね。自分も中3でベンチ100キロを上げるまで、まったく興味がなかったんです。本当にちょっとしたきっかけだと思うんですよね。ちょっとバーベルを使ってみたら重い物を持ち上げられるようになったとか、少し筋肉がついていたとか、きっかけ一つなので、筋トレなんて…と思っている人には、一回騙されたと思ってやってみてほしいですね。きっとピッサリ!!できると思います。
★次回は背中トレーニングの動画を公開
取材/佐久間一彦 撮影/中田有香
1982年10月31日、高知県出身。自衛隊を経て2008年春に大日本プロレスに入門。同年6月27日の石川晋也戦でデビュー。デビュー当初から強靭な肉体とパワーを武器に活躍。BJW認定ストロングヘビー、世界タッグ、アジアタッグなど、数々のタイトルを獲得している。決め台詞は「ピッサリ!!」。178㎝、120㎏。