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厳しくも面白いトレーニング【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第64回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか?

この春から高校生、中学生になった息子と娘が、それぞれ部活動で新たなスポーツを始めました。健康とストレス発散のために適度な運動をしてもらえればといいなと思っています。

さて、私の場合は日本一を目標にレスリングに取り組んでいたため、部活は適度な運動ではなく、「部活=死にそうな日々」というくらい厳しいものでした。平日は基本的に朝・昼・午後の三部練。朝がランニングと補強、昼がウエイトトレーニング、午後がマットでの技術練習やスパーリングというメニューでした。

朝練の補強は毎週メニューが変わり、厳しくも面白いトレーニングも多々ありました。たとえば「砂運び」。これは砂場で一輪運搬車に砂を目一杯詰め込み、それをこぼさないようにグラウンドを1周して、砂場まで戻ってくるというもの(これを何度もやる)。シャベルで砂を詰め込む動きで背筋や足腰を鍛え、一輪運搬車で大量の砂をこぼすことなく運ぶことで前腕、握力を鍛えるのです。

ハードルジャンプ、タイヤ引き、鉄棒や階段を使ったトレーニングなど、いろいろなトレーニングをやってきたなかで、とくに印象に残っているのが「タイヤ押し」です。スクラムで相手と押し合うラグビーの選手などは多く取り入れているトレーニングかと思います。雑巾がけの要領でタイヤを押すという地味にきついトレーニングです。掃除のときにやったことがある人も多いと思いますが、雑巾がけは結構な重労働あり、トレーニングにもなります。雑巾がけは四つん這いの姿勢でバランスを保つだけでも体幹が鍛えられ、そのままの姿勢で廊下を往復すれば足腰も強くなります。

雑巾がけは結構な重労働 ((C)す~ロン – stock.adobe.com)

「地味にきつい」と書きましたが、私たちがやっていたタイヤ押しは地味ではありませんでした。なぜなら「どこから見つけてきたんだよ」というくらい大きなタイヤを使っていたため、見た目がシュールだったのです。下の写真のような大きなタイヤを使って、きつい雑巾がけをやると思えば、なんとなくきつさを想像できるでしょうか。

(C)Dvarg – stock.adobe.com

地面を強く蹴りつつ、上体の力をうまく使って押さないと大きくて重いタイヤは動きません。初めてやったときは、全然動かすことができませんでした。それでも繰り返しやることで筋力がつき、体の使い方もうまくなって、できなかったことができるようになります。しかし、このタイヤ押しには大きな問題がありました。グラウンドが乾いているときはまだいいのですが、前日に雨が降ったりして湿っていると、タイヤが動きづらくなり、負荷が増すのです。

タイヤ押しはハンドボールコートを使ってやっていました。ハンドボールコートはゴールからゴールまでの距離が40メートル。雑巾がけをするにはなかなかの距離です。ちなみに通っていた学校にハンドボール部はなく、コートはタイヤ押しの専用となっていました。全身に負荷がかかる雑巾がけをタイヤで行なう。フィジカル強化にはすごく効果的な練習でしたが、あの大きなタイヤをどこから調達したのかは、最後まで謎のままでした。

筋トレにとってマンネリは大きな敵です。毎週メニューが変わる朝練を思い出して、筋肉への刺激が変わるトレーニングも取り入れてみようと思っています。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。