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食前、食後、薬を飲むタイミングが違うのはなぜ? 【ドクター長谷のカンタン薬学 16回】




風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、使い方を間違えると大変! この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。

Q.食前、食間、食後と薬によって飲むタイミングが違うのはなぜでしょうか?

(C)Kinoko Tagawa– stock.adobe.com

病院で処方される薬でも、ドラッグストアなどで購入する薬でも、服用するタイミングは必ず明記されています。食前、食間、食後……と薬によって飲む時間が違うのは、どういうときに飲むかによって、薬の効果が違ってくる可能性があるからです。「いつ飲むか?」は、薬の吸収や効果、副作用にもかかわってきます。

薬の多くは、胃で溶けて小腸で吸収されますが、空腹のときに薬を飲むと、薬は胃から小腸へと速やかに移行します。逆に胃の中に食べ物がある状態(食後)では、薬が小腸まで届くのに時間がかかります。薬によっては、早く腸に届けたいから空腹時に飲むべきものもあれば、ゆっくり届けたいから食後に飲むものもあるのです。

食前に飲む薬は、食事の30~60分前に服用することで効果を発揮します。また、食間とは最後の食事から2時間ほど後の空腹時を指し、食事の最中という意味ではなく、食事と食事の間という意味です。食後はだいたい30分以内で、胃の中に食べ物が残っている状態を指します。空腹時に飲むと薬の作用で胃の粘膜を荒らすなど、胃腸の不調を招いてしまう薬は、食後に飲むように設定されています。食前、食間、食後と、薬を飲むタイミングが食事とセットになっているのは、飲み忘れを防ぐというのが一つの狙いです。薬は忘れずに飲んでほしいので、食事の前後などわかりやすいタイミングで、そもそも治験をしているのです。

しかし、仕事の関係で食事をする時間が不規則という方もいることでしょう。食事のタイミングに合わせると、間隔が長すぎたり、あるいは短すぎたりするとなると、いろいろと問題が出てきます。

薬は一日2回のものもあれば3回のものもあります。服用間隔は、体内における薬の濃度を有効量の範囲に保つように決められています。そのため、投与の間隔が長すぎると薬の効果は失われ、逆に間隔が短すぎると濃度が高くなりすぎて、効果だけでなく、毒性、副作用が出てくる危険があります。原則的に多くの薬はセーフティーマージンが広く設定されているので、すぐに副作用が出ることはないと思いますが、気になるようでしたら薬剤師、医師に相談してみてください。また、忙しくて食事の時間がないとしたら、おにぎり一つ、あるいはバナナなど、ちょっとしたものでも食べるようにして、薬を飲むようにしたほうがいいでしょう。

一般的に飲み薬が吸収された後、肝臓を通過して血液中に入り効果を発揮するまでには、15~30分程度かかります。薬を飲んだときにすぐに効果が出ないからといって、続けて飲み足したり、違う薬を飲んだりするのは危険なので、絶対にやめてください。

 

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長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社