初代学生フィジークチャンピオンを目指して~辻大成君(4年)~【GKB応援団:帝京大学バーベルクラブ編】




学生ボディビル、通称・学ボを盛り上げるべくスタートした連載「学ボ応援団(GKB応援団)」。2校目となる帝京大学バーベルクラブから最後に登場するのは、4年生の辻大成君。昨年の大会で彼を見かけたちびめがさんは「大学生とは思っていなかった」と驚いたとのこと。すでにフィジークでの実績も残している辻君の思いを聞いた。

上田夢希君や寺島遼さんについていったのは
間違いではなかった

ちびめが 日体大の冨山譲二君にライバルのことを聞いたら、辻君の名前を挙げていたんですよ。だから今日、ぜひお話を聞いてみたかったんです。

 ありがとうございます。僕のことを知ってくれている人がいるのは嬉しいですね。

ちびめが 実は、去年のオールジャパン(ジュニアで5位入賞)や東京選手権(176cm以下級で準優勝)で辻君のことを見て知っていたんですけど、大学生だと思っていなくて。SNSで帝京大にいると知って、驚いたんですよ。

 よく言われます。学生であることもあまり言っていなかったので(笑)。

ちびめが そんな辻君は、もともと筋トレをはじめたきっかけは?

 単純にダイエットです。ずっと競泳をやってきたてんですけど、大学受験のシーズンで太っちゃって。なんとなくジムに入会してみて、そこでいろんな出会いがあり、フィジークのことを知ってトレーニングを始めた感じです。

ちびめが 大会を目指そうと思ったのは。

 大学1年生でジムでアルバイトを始めたときに、ボディビルをやっている大学の先輩がいたんです。大会に出るから見に来てくれって言われて、それをきっかけに自分も出てみようと思いました。1年生の10月くらいからもう、大会に向けて本格的に体作りを始めていました。

ちびめが 初めて大会に出たのはいつだったんですか?

 2年生のときの『サマー・スタイル・アワード』にですね。見事に予選落ちしたんですけど、そのときは大学卒業までにオールジャパンに出たいと思っていたんです。だから『サマスタ』はある意味練習という感じだったんですけど、次の年(去年)にJBBFの大会に出てみたら、思った以上の結果が付いてきて自分でも驚きました。

ちびめが なんかトントン拍子にいっちゃったわけですね。

 僕自身、いまだに欠陥だらけだと思っていますよ。自分に自信があるタイプでもないので。東京選手権のときも、6位に入ればいいかなと思っていたら準優勝で、正直なところあまり実感がないというか。

ちびめが トレーニングは誰かに教えてもらったりしてるんですか?

 去年のオールジャパンで一番上のクラス(40才以下176センチ超級)で5位だった上田夢希君と、最初に『サマスタ』に出たときに知り合って、トレーニングをゼロから学んでいきました。他には寺島遼さん(2018 IFBB アジア選手権優勝など)とも仲良くさせていただいていて、そういうトップ選手から直接教えていただいているものが僕の基盤になっています。

ちびめが 自分から声を掛けたんですか?

 上田君には、この人についていけば間違いないと本能的に思ったので、ジムで見かけて猛アプローチしました。数ヶ月間、ずっと毎日のように一緒にやってくれて。初めて『サマスタ』に出たときには63キロだったんですけど、去年は69キロになりました。上田君についていったことで5キロもアップしたんですよ。最初は何もわからない状態だったので、僕の中ではそれまでのことはすべてリセットして、全て上田君をコピーしていましたね(笑)。それが間違っていなかったなと思いました。

僕は僕の個性を出して優勝を目指す

ちびめが ポージングはどうやって勉強しているんですか?

 実は、ちゃんと練習したことがなくて。去年もトレーニングをしながらポージングを見てもらったことはあったんですけど、基本的にはポイントだけ頭に入れて、YouTubeとかで見たのを頭にイメージして、ステージで表現しただけという感じです。感覚的というか、頭のなかで「こうしたい」と思ったものを出しています。

ちびめが ちなみに、キツくてやめたいと思ったことはありますか?

 実は去年9月のオールジャパンが終わった後は、やめようかと思っていました。ジュニアで5位だったことが、正直悔しすぎて。才能ないんだなと、落ち込んでしまったんです。でもそのときだけですよ、本当に負けたくないんで。

ちびめが 今後、目指していきたいところはありますか。

 とにかく金メダルが欲しいんですよ。関東ではオーバーオールに出たいっていうのもありますし。JBBFの日本代表になって海外の大会に出る。そこで寺島さんに並ぶのが目標です。

ちびめが ライバルも多いですよね。

 今年はまずジュニアを獲りたいんですけど、僕が出場するクラスは、若くてタイトルを取っている人がけっこう集まっていて。一番警戒しているのは、今年5月の大阪オープンのフィジークのオーバーオールで優勝した穴見一佐(ゴールドジム博多福岡)。同い年で仲も良いので、あいつに勝ってジュニアの頂点に立ちたいなって。

ちびめが 今、自分に足りないと思っていることは?

 う~ん、自分に自信がないことですね。隣に人がいると不安になっちゃうというか。結果が付いてくれば自信になるとは思うんですけど、不安を感じてしまう。去年は田口純平さんや倉持健太郎さんといった、偉大な方々と同じステージに立つことができてすごく誇りには思っているんですけど。

ちびめが 自信はいつ満たされるかわからないから難しいですよね。

 でもある意味、自信がないことで続けられている面もあるんですよ。だからこのスタイルは変わらないかな。自信がない代わりに、誰よりもステージを楽しもうと思っています。あそこに立って、見に来てくれているお客さんの声に手を振るのが楽しいんです(笑)。

ちびめが 去年に結果を残したことで、いろいろな人から“ライバル”と思われることになりそうじゃないですか?

 僕は、常に挑戦者であるという気持ちは忘れないようにしているつもりです。一方で、「辻君を倒したいのでフィジークはじめる」「いつか隣に並びたい」みたいなのSNSで見たりすることが最近は多くなったので、そういう立ち位置にきたんだなという自覚はあります。追われる立場ではあるんですけど、あくまで僕が目指しているのは世界へ旅立つことです。

ちびめが 逆に、辻君がライバルと思っているのは?

 同年代で抑えたいのは、うちのバーベルクラブの川村圭吾と、上の階級の穴見一左。この2人は抑えて。階級が違ってもオーバーオールで戦えるので、同年代の2人には勝ちたい。夢としては、寺島さんと並ぶ、そして勝つ。世界でもオールジャパンでも。

ちびめが 改めて、そのために必要なことは。

 今の自分のトレーニングは、上田君や寺島さんのコピーなんです。すべてではないですけど7,8割を占めています。それだとオリジナルは超えられないと思っているので、僕は僕の個性を出していければ。僕の強みはバランスなのかなっていうのは思っているので。

ちびめが ちなみに、学生フィジークは?

 もちろん出るつもりですよ。ジュニアの日本代表になれば、その延長線上で出ることになると思うので。やっぱり令和最初の初代学生フィジーク、優勝したい。去年みたいにオールジャパンで燃え尽きなければ(笑)。

ちびめが 最後に、大学卒業後のことは考えているんですか?

 たぶん普通に就職すると思いますが、競技は続けるつもりです。仕事のことや、家族のことで身を引かなくてはいけないときが絶対くると思いますが、それまでは夢を追いたいと思います。

ちびめが 「ボディビルに引退はない」と私は思っているのでぜひ続けてください。

 そうですね。たとえ一度やめたとしても、いつかマスターズで復活したいです。

取材/ちびめが 写真/木村雄大