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パラ・パワーリフティングを体験してみました【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第87回】

VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか?

先日、リオデジャネイロパラリンピックに出場した、パラ・パワーリフティングの西崎哲男選手を取材させていただきました。今年の世界選手権(54㎏級)では8位となり、東京パラリンピックへの出場、活躍が期待される選手です。こちらのインタビューの模様は追って掲載させていただきますが、そもそもパラ・パワーリフティングって何?という方も多いと思うので、インタビューに先駆けて競技の紹介をしていきましょう。

簡単に言うと、筋トレをしている人にはおなじみのベンチプレス1種目で行なわれる競技で、下肢に障がいがある方が対象です。基本的にルールは一般のベンチプレスのルールに準じています。ただし、障がいを考慮して一部ルールが変更されています。健常者の場合は足が地面につく姿勢でベンチプレス台を使用しますが、下肢に障害のある選手は台に全身が乗るようにしてベンチプレス台を使用します。全身が乗った状態で試技ができるように特注されたベンチ台を使用し、足にベルトを巻いて固定してから試技に入ります。

3名の審判による判定で成功か、失敗かの判断が下されます。そのチェックポイントとして代表的なものは2つ。一つは胸でピタリと止めること。バーを胸まで下げてから挙上するのですが、その際、目視で確認できるように胸で止めなければいけません。バーを胸でバウンドさせるようにして挙上するのは反則になります。二つ目のポイントは左右で同時に真っすぐ挙上すること。バーを挙げる際、どちらからに傾いたり、激しく揺れたりすると、挙上できたとしても失敗とみなされます。

試技は全部で3回。一番重い記録が採用され、順位を決定します。階級は男女とも10階級。男子の最重量級(107㎏超級)の選手は300㎏以上を挙上します。これはほぼ同条件の健常者の記録を超えています。上半身の力だけでこれだけの重量を挙上するというのは、本当にすごいパワーだと思います。

さて、競技の説明をしてきましたが、百聞は一見にしかず。西崎選手のアドバイスを受けながら実際に体験させてもらいました。

週に一度は胸トレーニングの日があるので、ベンチプレスは毎週欠かさず行なっています。ところが日ごろやっているときは形が違うため、ベンチ台に寝てシャフトを握ったときに恐怖心がありました。写真のように足が完全にベンチ台に乗った状態となり、下半身の力を使うことができません。普段扱っているよりも軽い重量でないと、安定して行なうことはできませんでした。ベンチプレスに限らず、重いものを持ち上げるときなどは、誰もが無意識に下半身の力を使っていると思います。下半身の支えなしで重いものを持ち上げることをイメージしてみてください。きっとその大変さがわかるはずです。

ちなみに西崎選手の54㎏級でのベストは142㎏。自分の3倍近い重量を挙げることになります。これでも世界のトップにはまったく及ばないというのだから、どれだけ大変な世界か想像に難くありません。どんな競技も世界を目指すアスリートは本当にすごいと改めて実感。貴重な体験をさせてもらいました。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。