テストステロンは”縄張り意識”を強くするらしい
10月27日放送の『ミライ☆モンスター』(フジテレビ系)に相澤隼人選手が登場しました。
同番組に取り上げられたのは4回目。それだけ注目すべき選手であるということですが、とくに今回は日本選手権という大舞台に挑戦する相澤選手の様々な感情が表現されていて、感動的な内容でした。
個人的に印象に残ったのは相澤選手が「ルーティンを大切にしている」と語ったシーン。
具体的には、
「トレーニング前は必ずブラックコーヒーを飲む」
「練習に向かう電車は同じ車両の同じ席」
「ジムではいつも同じロッカー番号」
「ストレッチは毎回同じ場所で行なう」※他の利用者がいない場合。
といったものでした。それによって体のコンディションや小さな異変に気づくことができるのだそうです。
イチロー選手の“カレー”はあまりにも有名ですが、自分なりのこだわりや決め事を持っている選手は少なくありません。そして、それが少なくともその選手にとっては確実にプラスに働いているようです。
相澤選手の話を聞いて共感したのは「ロッカー」でした。私は「ここしか使わない!」というほど徹底してはいませんが、「まずはAに行く。空いていなければB。そこもダメならC」という感じで、気づけば2~3ヵ所に限定されています。
一般的なロッカーの選択パターンは、大別すると次の3つでしょう。
①契約ロッカーなので、場所は変えようがない。
②受付の際に番号入りのカギを渡されるので、自分では選べない。
③自由。
あえて「いつも同じ」と言った場合、多くは③であると考えられます。
ロッカー数が100単位になるような大型施設では、どうしても混雑しやすいエリアと、そうでもないエリアが生まれがちです。お気に入りロッカーを決める際には、これが一つのポイントになる場合も多いと思います。「混みにくいところを選ぶ」という発想です。
もう一つのメジャーな方向性としては、「好きな位置で選ぶ」が挙げられます。たとえば「なるべく奥に入る」「ジムの入口に近いところ」といった要素で決定するというものです。
私はどちらかと言うと「好きな位置」派ですが、そこまで執着はありません。ふり返ってみると、「初日に使ったロッカーか、その上下左右」という程度のいいかげんな選び方をしている傾向があります。
それなのに、なぜか同じロッカーに少しこだわってしまうのは自分でも不思議です。
「混雑を避ける」派が相対的なのに対し、「好きな位置」派は絶対的な基準なので、同じ絶対的思想を持った人と衝突するリスクもあります。
しかも、筋トレをすると男性ホルモンである「テストステロン」の分泌が上がりますが、テストステロンが多さは“縄張り意識”の強さと相関があると言われています。
これは何となくわかりますよね。動物のオスがテリトリー侵害に敏感に反応するのと同じようなもので、おそらく本能的な現象でしょう。
そのせいなのか、同じように小綺麗なロッカールームで同じように裸になるスパやスーパー銭湯などと比較すると、ジムは緊張感が少し高めであるように感じます(私見ですが)。鍛えている人たちの集まりなので、他人の体が気になりやすいのかもしれません。
もちろん知り合い同士が仲良く会話をしている場面もよく見かけますが、知らない者同士が接近すると、とくに競い合っている関係でもないのに、ライバルであるかのような独特のムードが発生することがあります(私感ですが)。
ほぼ人がいないロッカールームなのに、偶然にも隣のロッカー同士が同じ時間に居合わせたりすると、そのムードには拍車がかかります。
不思議なもので、人の少ない時にかぎって、そのような偶然が起こりやすいものです。
そんな静まり返った空間で、いつものロッカーを使うために、誰かが着替えている隣に歩み寄っていくのはちょっとした勇気が必要です。「こんなに空いているのに、なぜココ!?」と思われているのは確実だからです。
中には「ああ、いつもこのロッカーを使っているんだな」と理解を示してくれる人もいるかもしれませんが、それはレアなケースでしょう。
「好きな位置」派にとって最大のハードルは、このような場面にあると言えます。
居心地の悪さを避けるためにいつもと違うロッカーを使うかどうかは、意見が分かれるところではないでしょうか。
私はそれほどポリシーがないので、たぶんルーティンをあきらめて少し離れたロッカーを使うと思います。
相澤選手もストレッチ時に他の人がいれば場所を変えるそうなので、理性や社会性を優先する人なのだと思います。20歳という若さなのに非常に大人です。だから結果を残せているのでし。
一方で、ルーティンへのこだわりが異常に強い人もいます。
以前、こんな出来事がありました。
30代前半くらいの男性でしょうか。彼は私が着替えようとしているところに近づいてきて言ったのです。
「そこ、僕のロッカーなんですけど」
「ああ、そうでしたか。すみません」と場所を譲ってから、気づきました。
「いや、決まってないじゃん!」
テストステロンがとても多そうな方でした。
文/ジェット・ハヤタ