VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 職場で半そでは私一人になりました。
さて、先日、日本バスケットボール協会・スポーツパフォーマンス部長の佐藤晃一さんを取材させていただきました。佐藤さんはNBAのワシントン・ウィザーズでアスレチックトレーナーを務め、その後、ヘッドハンティングされたミネソタ・ティンバーウルブズではスポーツディレクターとアスレチックトレーナーを兼務。その手腕を高く評価した日本バスケットボール協会が、現職で迎え入れたという凄腕の人物です。
トレーニングについて非常に面白いお話をうかがえたのですが、今回はVITUP!の取材ではなかったため、ここでの掲載は控えさせていただきます(いずれVITUP!にも登場してほしいです)。しかし、取材後の雑談のなかでも興味深いお話を聞くことができました。こちらのお話を紹介しましょう。
子どもの心理を探ったアメリカの研究の話です。400~500人の小学5・6年生のグループを2つにわけて、両方のグループに最初は簡単なIQテストをやってもらいます。簡単なものなのでみんなが好成績を残すことができます。ここでAグループは「すごく頭がいいね」「良い点数だね」と結果・知性を褒めます。これに対してBグループは「よく準備してきて偉いね」「ちゃんと勉強してきたんだね」と過程・努力の部分を褒めます。
続く第2段階として難しいテストと簡単なテストを用意して各自に選択させると、知性を褒めたAグループの約7割は、簡単なテストを選択。逆に努力を褒めたBグループは9割が難しいほうを選んだそうです。第3段階は選択肢を与えずに両方のグループに難しいテストをさせます。すると、Aグループがすぐに諦めてしまうのに対して、Bグループは一生懸命取り組んでテストに挑む過程を楽しもうとします。そして最後にもう一度、最初と同じ簡単なIQテストを行なうと、なんとAグループは点数が20パーセントもダウン。対するBグループは30パーセントアップという研究結果が出ました。
これは何を意味しているかというと、褒め方によってマインドに変化が起こるということです。結果・知性を褒められたAグループの子どもたちは、最初に結果を褒められたので良い結果を出すことを第一に考え、2つ目のテストでは簡単なほうを選択し、難しくてできないとすぐに諦めてしまいます。Bグループの子どもたちは過程や努力を褒められたため、結果を恐れずにチャレンジするマインドになり、難しいテストに挑み、問題が解けなくても粘り強く取り組むようになりました。
結果よりもチャレンジすることが大事だとわかれば、失敗を恐れずに挑戦できます。しかし、結果がすべてとなってしまったら、失敗の恐れがあることにはチャレンジできなくなる。挑戦し続ける人間と、失敗を恐れて何もしない人間とでは、どちらがより成長するかは明白です。こうした研究結果をもとに、指導者には結果よりも過程を評価するようにと伝えているそうです。
この話を聞いていて、トレーニングを続けられる人と、続けられない&始められない人のメンタルにも通じるものがあるのではないかと仮説を立ててみました。トレーニングを続けられる人は、子どもの頃に頑張った過程や努力を評価してもらってきた人。そういう人は頑張ることが喜びだから、コツコツと努力し続けることができ、困難なことにもチャレンジできるのです。一方、続けられない&始められない人は、良い結果のみを評価されてきた人。そういう育ち方をした人は、結果だけを求めるからすぐに良い結果が出ないと簡単に諦めてしまう。あるいはできないと思ったら最初からやらない。そんなマインドなのではないでしょうか。これはトレーニングに限らず、いろいろなことに当てはまるような気がします。
では、大人になってからすでに出来上がっているマインドを変えていくにはどうしたらいいのか? もう手遅れです……なんてことは言いません。過程や努力を褒めることを自分自身でやってみればいいのではないでしょうか。起こった結果の良し悪しは置いておいて、まずはトライした自分を褒める。トライした過程のなかで頑張ったことを一つでも見つけて褒める。自分のことは自分は一番よく知っているのだから、褒めるのは簡単なはず。誰かに依存するのではなく、自分でやればいいのです。
この「週刊VITUP!」は昨年の3月から毎週書き続け次回で90回。他の業務が多忙で書く時間がないとき、ネタがなくてしんどいときも当然ありますが、毎週頑張った自分を自分で褒めながら続けてきました。過程や努力を褒めるのは大事なことですね。
今週もよく頑張りました。
おわり。
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。