3月7日、あるフィットネスジムの風景




久々にジムに行きました。10日ぶりくらいです。運動不足ぎみだったため、体重は前回から600グラムも増えていました。

足が遠のいていたのは忙しかったせいもありますが、自粛していたのも事実です。

手洗いはこまめに。Mongkolchon-stock.adobe.com

安倍総理が「換気が悪く密集した場所や不特定多数の人が接触するおそれのある空間」として「スポーツジムやビュッフェ」を挙げたのは3月1日。それを受ける形で、日本フィットネス産業協会(略称FIA)は業界の信頼が損なわれるリスクを避けるため、「フィットネス関連施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を3月3日に発表しました。

たしかに屋内は換気が悪くなりがちです。しかし、自分自身やジム側が十分な対策を施していれば問題ないのではないか、という葛藤がずっとありました。今回足を運んだのはストレスが溜まっていたせいもありますが、ジムの現状を生で見てみたいと思ったからです。

ちなみに本日3月7日にも「横浜市のジムで70代男性が1406人と濃厚接触」というニュースがありました。厚生労働省のHPによると濃厚接触には2つの基準があり、➀距離の近さ、➁時間の長さ、と定義されています。具体的には「必要な感染予防策をせずに手で触れること」「対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(目安として2メートル)で一定時間以上接触があった場合」とのこと。これを基準にするならば、「男性が通った5日間にジムを利用した1406人」を濃厚接触者とする発表は過剰であると感じますが、それも安全を重んじれば仕方ないのでしょうか。

さて、私は年間を通じていくつものジムに行きますが、本日は自宅の近所にある中規模ジム。土曜の昼間とはいえ、自粛ムードでほとんど会員はいないのではないかと予想していました。
ところが、ドアを開けてみると、いつもと変わらない光景が。20名ほどの男女が筋トレに励み、ランニングマシンも空きナシ状態。スタッフは全員マスクをしていますが、トレーニングをしている人は全員ノーマスクです。ちょうどスイミング教室がはじまる時間だったようで、子どもたちが「こんにちはー!」と言いながら次々にやって来ます。スタジオはヨガクラスの最中で、やはり15~16人ほどが参加していました。

スタッフの女性に「影響ないですか?」と尋ねると、「はい、おかげさまで。今のところ、いつもとあまり変わりません」とのこと。3月は事前予告なしに休会できる“特別休会”制度も設けたそうですが、申し込んだ人はほとんどいなかったそうです。

もちろん呑気に過ごしているわけではなく、アルコール除菌剤を各所に置いたり、マシンの除菌を徹底したりといった対策はしています。スタジオプログラムは、換気をよくするためにドアを開けたまま行なわれていました。春の特別イベントなどは中止にしたそうです。

除菌は念入りに。Imaging L-stock.adobe.com

それなりの緊張感はありましたが、ある意味、拍子抜けするほど普通に近いムード。会員のみなさんは、コロナの感染拡大を社会的には重大な問題ととらえながらも、個人レベルではさほど怖いものではないという認識なのかもしれません。

私自身は念のためマスクをしてトレーニングをしました。そして、いつもの三分の一ほどの時間でジムを後にしました。浴場のサウナに入ってみると、座る場所がないくらい混雑していたので、やめておきました。なんとなく、です。

更衣室に顔見知りのオジサンがいたので「なんか、いつも通りですね」と話しかけてみると、「みんな、ほかに行くとこないんですよ」と笑っていました。
「それにトレーニングしている人は、それをやらないという選択肢がないからねぇ」

これは多くのトレーニーの本音でしょう。トレーニングには一種の中毒性があります。一定期間以上のトレーニングを経験した人なら、「鍛える生活」と「鍛えない生活」がまったく別の世界であることを認識しているはずです。筋肉を刺激しないと体が衰えるだけでなく、やがて思考のベクトルまで変わっていくことを体感しているのです。

とはいえ、このままで大丈夫というわけではありません。実際、営業を休止したり、プログラムを中止にしたりしているジムはありますし、休会者が増えたジムも多いと聞きます。この状況が長期化すると、業界全体が悲鳴を上げることになりかねません。とくに資金が潤沢でない個人ジムやパーソナルトレーナーは、キャンセルが相次ぐと死活問題になってきます。知人のトレーナーも、ここ数日はまったく稼働していないと嘆いていました。

今は、この騒ぎが一刻も早く終息することを願うばかりです。また、ジム通い自粛を国が求めるのであれば、かわりにフィットネス業界に何らかの救いの手を差し伸べてほしいものです。ジムやトレーナーは健康増進やアンチエイジングも含め、日本の元気の一翼を担っていることは間違いないのですから。

そして、電車や飲食店などと比べてジムが圧倒的にハイリスクとは思いませんが、どうしても行く場合は、個々でも徹底した感染防止対策を。本当のリスクは「自分は大丈夫」と思ってしまう心から生まれるように思います。

文/ジェット・ハヤタ