緊急事態宣言でジム休館、“鉄人”小橋建太の思い【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第111回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として、4月7日に東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫・福岡の7都府県に緊急事態宣言が発令されました。これに伴い、ゴールドジムやエニタイムフィットネスなどの大手トレーニングジムも、対象となる都府県のジムの臨時休館をアナウンスしました。

そうしたなか、緊急事態宣言が発令されると、即座にジムの休館をアナウンスしたのが、元プロレスラーの“鉄人”小橋建太さんがオーナーを務めるエニタイムフィットネス等々力でした。小橋さんがエニタイムフィットネス等々力をオープンしたのは2018年4月30日。まもなく2周年ということで様々な企画も予定していたようで、「残念な気持ちはある」としながらも、いち早く休館の判断を下した背景には「会員さんの安全を守ることが第一」という気持ちがあったと言います。

「7日に緊急事態宣言が出されるというニュースがあって、その日の朝からスタッフで打ち合わせをしていました。エニタイムフィットネスのいいところは、オーナー個人の意見を尊重してくれるところ。本部とも連絡をとっていて、緊急事態宣言が出たら休館するという意思を伝えていました。とにかく会員さんの安全を守ることが第一ですから」

7日の夕方からの記者会見で緊急事態宣言が発令されると、会見終了直後に「緊急事態宣言が発令された為4月8日20時より施設利用できなくなります」とアナウンス(その他のエニタイムフィットネスの対象ジムは4月9日のスタッフアワー開始時刻から休館)。事前にスタッフと打ち合わせをしていたことで、迅速な対応ができたようです。

「会員さんは何日の何時まで使えるのか気になると思うので、なるべく早くお知らせをしたかった。20時までとしたのは、スタッフがいる時間ではないと、何かが起こったときに対応ができないから。会員さんが安心してトレーニングをできるように、スタッフがいる時間までで区切らせてもらいました」

エニタイムフィットネスやゴールジムは、会員になっていれば全国の系列ジムの使用が可能。つまり休館の対象となっている都府県以外のジムは使用できるということ。小橋さんはこれに対して「今はこういう時期だから普段利用しているジム以外の利用は控えてほしい」と訴えます。

「僕はエニタイムフィットネス等々力を誰もが安心して楽しく利用できるジムにしたいと思っています。エニタイムはどこのジムでも利用できるけど、“ここが自分のジムだ”と思ってもらいたい。休館になってもトレーニングをしたいという人はたくさんいると思います。だけど、他の県のジムに行ってトレーニングをするというのは絶対にやめてほしい。この緊急事態宣言が出ているときに、それは一番やってはいけないことだと思う」

ジムに限らず、人の移動は感染拡大につながるもので、もっとも避けたい行為です。小橋さんが言うように、普段利用しているジムが使えないからといって、他県のジムにトレーニングに行くという行動は絶対にやめてもらいたいと思います。ジムに行けなくてもやれることはあります。

「自分のトレーニング哲学として、苦しいときこそ成長できるチャンスだと思っています。自分でどうするかを考えるいい時間になります。パワー系のトレーニングが無理なら持久系をやってみたり、こういう鍛え方があるとか、新しい発見ができるかもしれない。また、トレーニング論、トレーニングに対する考え方を学ぶ機会にもできると思う。苦しいことを乗り越えてこそ、人生においても、トレーニングに関しても成長できると思います」

現役時代の小橋さんは、再起不能と言われたヒザの大手術をしたときも、命も危ぶまれた腎臓がんになったときも、できるトレーニングをしながらコンディションをつくり、奇跡の復活を果たしてきました。「苦しい時こそ成長できるチャンス」という言葉は、とても説得力があります。安心して楽しくトレーニングをできる環境を取り戻すためにも、“鉄人”の言葉を胸に刻み、感染拡大防止を意識しながら、今できるトレーニングを続けていきましょう。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアンの取材を手がける。