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休息に必要な睡眠の仕組みとは?【疲労回復の専門家・福田英宏先生の「しっかり休めていますか?」vol.2】

日々ハードなトレーニングに勤しむ方からサラリーマンや主婦の方まで、すべての人にとって共通して必要なのは休息・リカバリーでしょう。あなたはしっかりと体を休ませることができていますか? 今回、プロアスリートなどに「リカバリー理論」を指導するほか、休養や健康関連を展開する企業のコンサルティングを手掛ける、“疲労回復の専門家”福田英宏先生にお話を聞きました。今回は、「睡眠の仕組み」について。

睡眠は量より質が大切

――前回は、そもそも疲労とは何なのか、またリカバリーのためには自律神経の交感神経と副交感神経が働く時間を正してあげることが大切だと伺いました。ここからは、休養・リカバリーのために具体的にやるべきことを教えていただきたいと思います。

福田:いきなりですが、「疲労回復に必要なことは何?」と聞くと、何と答えますか? おそらく「睡眠」と答えるのではないでしょうか。確かにその通りです。ただ私自身の経験ですが、スポーツチームの監督や選手であっても「疲労回復のために何をしていますか?」と聞いても、「風呂に入って寝てます」というだけが多いんですね。睡眠や入浴といったものの役割をしっかり理解されている方は少なくて、「寝ていれば回復するんでしょ?」と思っている人が、一般層の方もほとんどではないでしょうか。

――確かに、疲れているときはとにかく寝ればいいと思ってしまっています。

福田:睡眠が疲労回復に大切なのは間違いないですが、まずその前に、睡眠の役割を少し知ってほしいと思います。睡眠の役割は脳と体の休息のほかに、記憶の整理や定着につながります。睡眠は勉強したことを覚えるのに役立つということで、睡眠が少ない子供は記憶力があまり良くないというエビデンスもあります。他には情動の整理、ホルモンバランスの調整、免疫力を上げる、脳の老廃物を取るといった役割があります。睡眠中というのは成長ホルモンが出ますので、トレーニングをしている人はしっかりと寝ないと良い筋肉にはならないということになります。

――良い眠りができないと、悪影響を及ぼすことがありますよね。

福田:「睡眠負債」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、例えば6時間以下の睡眠を2週間継続していると、2晩徹夜作業をする作業能率に匹敵すると言われています。また、起床から15時間後の作業能力は、酒気帯び運転時の作業能力に匹敵するともいわれています。プレゼンティーイズムといって、出勤(アスリートなら練習)していながらも、体調不良やメンタル面の不調が原因で、従業員(選手)のパフォーマンスが低下している状態を示す言葉もあります。要はただ来ているだけ、選手ならただ練習をこなしているだけでパフォーマンスが上がっていないということです。

――何時間寝ればいい、みたいなことをよく聞きますが、それについてはいかがでしょうか?

福田:以前は「8時間睡眠が良い」「22時には寝ましょう」とか言われていたと思いますが、実はそれはあまり科学的な根拠はない話なんです。というのは年齢によって、必要な睡眠時間の目安というのは変わってくるからです。年配の方で「6時間しか寝られない、睡眠不足なのかしら」と悩んでいる方もいらっしゃるのですが、70歳くらいの方ならそれくらい寝られていれば十分なんです。なぜなら、睡眠は量よりも質が大切だからです。

――たくさん眠るよりも、質を高めていくことが大切だと。

福田:そうです。もう少し具体的な眠りの仕組みについては、下の図を見ていただきたいと思います。これは聞いたことがある方も多いと思いますが、眠りには「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が2つあり、睡眠中は交互に4、5回繰り返し、朝にレム睡眠のときに目覚めるというのがリズムになっています。90分周期でそれぞれ繰り返されるのですが、このなかで最も大切なのが、最初のノンレム睡眠なんです。ここでいかに自律神経の副交感神経を優位にした状態で眠りにつくのかが大切になります。

――良い状態で眠りはじめることが、その夜の睡眠全体に影響してくるわけですか?

福田:そうです。図では睡眠のレベルを1~4で振っていますが、最初のノンレム睡眠でいかにレベル4の睡りまでいけるか。レベル4まで達すれば、成長ホルモンの分泌や新陳代謝、免疫力を上げることができるようになります。ここでレベル2くらいの状態でしか寝れないと、なかなか回復がしづらい状況になります。世界最高峰の睡眠研究機関・スタンフォード大学睡眠研究所で長年研究を続けている西野精治先生も、ここを「黄金の90分」と表現しておられ、最初が良ければ残りも平均して良くなっていくと言われています。

――実際はそのように寝られている人は多いんですか?

福田:僕がみているアスリートなどは、交感神経が優位な状態で寝てしまっている選手が多いなという感じです。先ほど、睡眠は量より質だと言ったのは、例えば睡眠が5、6時間程度で多少短くても、最初の90分を副交感神経が優位な状態で眠ることができれば、疲労回復につながるからです。逆に言えば、「僕は10時間寝てますよ」と言っている方がいたとしても、交感神経が優位な状態で眠っていれば、いくら長く寝ても回復はしづらいということになります。

第3回「良い眠りのためには何をすればいい?」に続く

取材・文/木村雄大

福田英宏(ふくだ・ひでひろ)
株式会社RecoveryAdviser(リカバリーアドバイザー) 代表取締役。プロアスリートをはじめとするスポーツ選手に「リカバリー理論」を指導するほか、休養や健康関連を展開する企業のコンサルティングを手掛ける「疲労回復の専門家」として活動中。これまで指導したスポーツ選手は、プロ野球球団やプロサッカーチームをはじめ、ラグビーやバスケット、バレー、卓球、テニス、ゴルフ、トライアスロンなど多岐にわたる。リカバリーウェアをはじめ、各種サプリ・グッズ等の最適な使用方法をアドバイスしてきた。自身も小学生5年から大学まで本格的に水泳競技に打ち込み、大学卒業後にはトライアスロン日本選手権に出場。また日本山岳耐久レースにも出場している。
●早稲田大学大学院スポーツ科学研究科(修士):研究テーマ『疲労回復ウェアに関する研究』
●睡眠改善インストラクター
●温泉入浴指導員
●Wasedaウエルネスネットワーク講師
●日本スポーツ産業学会 正会員