PCの前に座って仕事をしていると、時々大きな背伸びをして、肩・首周辺を手でほぐすような仕草をすることはありませんか?
体の後ろ側、とくに肩・首周辺は凝りを感じやすい部位であることは皆さんもご存じの通りです。
PCに向かっていると、知らず知らずのうちにモニターに顔を近づけ、顎が下に落ちていくと同時に背中も丸くなっていく……。座り仕事は、体の後ろ側に付け入る隙を与えやすい体勢であると言えるのです。
一方で、体の前側はどうかと言えば、私たちはほとんど疲れを感じることはありません。でも、実際にはとても疲れを溜め込んでいる。すなわち、疲れの素因というのは体の前側のほうにこそ潜んでいるのです。
したがって、前回紹介したような「胸周りと腕の屈筋群のストレッチ」などは、まさに一石二鳥の方法として有効と言えるでしょう。加えて、今回は腕の屈筋群と手のひらに特化したケアの方法について紹介したいと思います。
腕と手は、器用さを求められるがゆえにとても我慢強く、弱音を吐く(=疲れを感じる)ことはありません。だからこそ、素通りせず、しっかりと労わってあげたい部位。とくに腕のコンディションがよくなれば、猫背や反り腰が軽減されることも期待でき、そういう意味では、決して歩き方とは無関係ではないのです。
1つ目は、腕のセルフマッサージ。肘と手首の中間辺りのゴリゴリとしたところを探し、反対側の親指で押さえながら、手首を左右にブラブラさせていきます(写真1~3)。これによって、腕の屈筋群をほぐしていきます。
次に、手のひらの真ん中あたりを反対側の親指で押さえながら“グーパー”を繰り返します(写真4~5)。
さらに、気持ちいいポイントを探しながら、押さえるポイントを少し変えて、また“グーパー”を繰り返してみましょう。
こうして手のひらの凝りをほぐすことによって、日々キーボードをたたくことによって、疲労を溜め込んでいる手の内側をしっかりと癒してあげましょう。
ちなみに、手のひらをいっぱいに広げてみてください。どのくらい広がりますか? 写真6が反りのある正常な状態。ところが、手のひらから指先にかけて筋・腱が短縮してくると、写真7のように開いているつもりでもこれが精一杯で、ピンと張ることができない人という人が意外に多いもの。残念ながら、こうした状態に陥ってしまっていることが、手のひらの疲れによる大きな代償の一つと言えるでしょう。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
Scandic care (スカンディックケア)
〒162-0056 東京都新宿区若松町10‐1 YSビル2 F
Tel. 03-3208-2543
Mail:info@scandiccare.jp
営業時間:平日. 11:00 ~ 21:00、土日祝. 11:00 ~ 20:00
公式HP
アー・ドライ治療院(新宿区)
ホームページ未公開。現在、新規受付はできない状況です。スカンディックケアにお問い合わせください。
取材/光成耕司