水が無害とは限らない。過剰摂取で起こる「水中毒」とは?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第45回は、水分の過剰摂取によって起こる「水中毒」について。

■下痢、めまい、頭痛、疲労感などの症状

水分は体にとって重要なものですが、それも過剰摂取してしまうと弊害が起こることがあります。それが「水中毒」。精神障害を持つ方に多く見られる症状ですが、一般的にも気をつけておく必要はあります。

私たちはトレーニングなどの要素がなくても、通常一日に2.5ℓ程度の水分が体から抜けていきますから、逆にそれくらいの水分は補給していかなくてはなりません。とくに夏場など発汗量が多い時は、熱中症予防としても水分補給はノドの渇きに関わらず積極的に行なっていく必要があります。

ただし、腎臓からの排泄能力を超えたスピードで大量の水分を補給し続けると、血液中のナトリウムの濃度が下がってしまうため低ナトリウム血症を引き起こす危険性が生じてくるのです。下痢、めまい、頭痛、疲労感といった軽い症状がほとんどですが、重症化する危険性もあると言われており、その場合には呼吸困難や意識混濁といったケースも出てきます。

何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」です。

スポーツドリンクのように、ナトリウムをはじめとするさまざまな電解質が含まれている飲料のメリットのひとつは、こういった点にもあると言えます。水分補給は日常生活ではノドの渇きとほぼ連動すると思いますので、一般的にはあまり心配することではないかと思いますが、例えば減量期のボディビルダーが代謝を上げるなどの理由でつねに水を飲み続ける場合などは注意が必要。急激に大量の水分を摂ることは避けたほうがいいでしょう。

私たちの体内は、さまざまな成分がバランスを取って成り立っています。とりわけミネラルはそのバランスの中心にある栄養素であり、その中でもナトリウムは中心的な位置づけにあります。血漿(けっしょう)浸透圧のように、ナトリウムのバランスが崩れることで浸透圧が崩れてしまい、熱中症をはじめとするさまざまな弊害も起きたりします。

水は無害であるという感覚から、ひたすら飲み続けるという行為は控えたほうが無難です。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。