2020年も残すところ2週間弱。天気予報では、年明けにかけて真冬の厳しい寒さになるとみているそうです。当然、ヒトの体のコンディションもこうした季節に左右されるもので、とくに暑い夏場と寒い冬場には、それが顕著な症状として現われてきます。
冬の体の特徴の一つとして挙げられるのは足元に痛みを抱える人、あるいはすっかり忘れていたころ(つまり、今の時期)足元に痛みが再発してくるという人が増えることです。外反母趾、足底筋膜炎、かかと痛、アキレス腱炎など症状は様々ですが、寒さの影響によって、痛みや不快感が足元に集中的に襲ってくるのです。
とくに末端の足指(手指もそうですが)は寒さに弱く、その寒さは血の巡りを鈍くさせ、結果として冷えに悩む人がたくさんいます。その後、冷えはこわばり→使いづらくなり→機能が低下し→痛みの発生というメカニズムを生み出してくると考えられるのです。
例えば、冬になると防寒対策として、足首まですっぽりと覆うブーツをはくようになりますが、それによって動きが制限されることも痛みの原因の一つではないかと考えられます。
そもそも寒さによって筋肉が硬くなりやすいところにもってきて、足首や足指ががっちりと固定されてしまっては、まさに負の相乗効果といっても過言ではありません。また、現在何も感じていなくても春になりブーツを脱いだ途端、足の変異に気づくということもあり得るので今から注意が必要です。
今年はコロナ禍にあって、リモートワークが推進されてきたことにより、少しでも運動不足を解消しようとウォーキングに努める人が増えてきました。しかし、コンディショニングセラピストの立場からいうと、凝り固まったままの足では歩けば歩くほど逆効果ではないかと思ってしまうのです。であれば、むしろ家の中でできるだけ用事をつくって素足で歩き回ったほうがいいのではないか、と。
私たちは、無意識のうちに‟スッ”と立っていることができます。でも、よくよく考えてみると、こんなにも小さな足裏の面だけでよくぞバランスをとりながら立っていられるものだと感心させられるものだと思いませんか? つまり、足裏にはそれだけ精密なセンサーが張り巡らされているということなのでしょう。もちろん、足指もバランスを維持するうえで重要な役割を果たしていることはいうまでもありません。
万が一、このセンサー機能に支障が生じたり、足指が固まったままだと、高齢者の場合には転倒するリスクが高まってきます。さらに、足裏とともに体のバランスを保つために‟日々戦っている”脛(前脛骨筋)とふくらはぎ(下腿三頭筋)にもより負担がかかることになり、こちらの場合には膝の痛みや股関節にまで悪影響を及ぼしかねません。
とくにふくらはぎ‟がちがち”の人は要注意です。一方、前側にある前脛骨筋は、ふくらはぎとはまったく正反対の‟性格”の決して不満を口にしないけなげな部位。加えて、足部を外側から支持する腓骨筋も辛抱強い部位です。
だからこそ、労わってあげることが大事。私は、一日の終わりには必ず、前脛骨筋と腓骨筋に感謝の気持ちを込めて擦ってあげています(笑)。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司