サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第69回は、筋トレ直後などに摂るべき栄養素について。
■BCAAやグルタミンの摂取も効果的
筋肉はつねに、合成と分解が綱引きをしている状態にあります。この綱引きはどうしても分解のほうが優位な状態にあり、とくに空腹などの状態では分解の優位性がグッと上がっていきます。
一方、合成を優位にするためにはレジスタンストレーニング(筋トレ)などによって速筋線維への刺激を与えてやる必要がありますが、難しいことに刺激を与えている間はエネルギーを消費しているために、分解が優位になってしまいます。トレーニング直後から、一気に合成が巻き返していくという構図です。これがいわゆるゴールデンタイムというものですが、ホエイプロテインのように吸収の早いタンパク質は、筋タンパクの合成と血中アミノ酸濃度の上昇が、うまく重なっていくので好都合となります。
また、合成を優位にするということは分解を抑えるということでもありますが、筋トレ後の分解をいち早く抑えてくれるのが糖質です。
多くのアミノ酸は肝臓で分解されますが、BCAAは筋肉で分解されます。それはBCAAの代謝酵素が筋肉にあるからですが、ひとつ目の酵素はつねに活性化されており、BCAAからアミノ基を取り出そうとしているのですが、ふたつ目の酵素はリン酸化されていて、通常は低い活性状態にあります。
ところがトレーニングなどによって、この酵素が脱リン酸化となり一気に活性化が進むため、BCAAの分解が促進されていきます。これはすなわち、筋肉内からBCAAが流出していくことでもあるため、BCAAの摂取が筋肉のリカバリーに効果的な理由となります。
他にアンチカタボリック(筋肉を分解して栄養源に変えてしまう現象=カタボリックを防ぐこと)として、筋肉の分解抑制に効果があるアミノ酸がいくつかありますが、もっとも効果が期待できるアミノ酸はグルタミンでしょう。グルタミンは小腸の唯一のエネルギー源です。免疫細胞の培養に欠かせないなどオンリーワンの機能をいくつか有しているアミノ酸ですが、同時にアンチカタボリックに関してはナンバーワンの機能とも言えます。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。