毎年、節分の頃——冬から春へと季節の変わり目の時季になると体調を崩す人たちが増えてきます。体のバイオリズムがそうさせるのか、実際、私の個人な感覚でも年間を通じてこの時季が体調変動のワースト1といっても過言ではありません。
これには様々な要因があると思いますが、まず気温の寒暖差、加えて気圧の変動による影響が大きいからではないかと考えます。とくにこの10年、いえ15年くらいは一年一年異なる特徴がある天候の変化が著しく、本来培ってきた「四季」に対応できる私たち日本人特有のバイオリズムをも混乱させているのかもしれませんね。
また、それらの影響は自律神経に作用し、その結果、心拍数の増減や不整脈、血圧も乱れやすくなり、さらには体のこわばりなど、体の至るところでバランス異常の危険信号が点滅し始めるのです。
ましてや昨年から続いているコロナ禍にあっては、精神的なストレスが強くなりさらに自律神経系のバランスを崩してしまう人が多く、例年以上に体調を整えるのが難しくなっているきていると実感しています。
もし、この危険信号が点滅した状態を引きずったままあるいは放ったままにしておくと2月から3月にかけて「ある日突然…」腰痛やぎっくり腰を引き起こしやすいということも少なくないのです。
実際、春先は‟春腰痛”といわれるくらい腰痛多発の季節で、私の治療院にも毎年ギックリ腰治療のお問い合わせが多くなるのがこの季節。ひどい時は1日に3件のギックリ腰のお問い合わせ! があることも珍しくなく、私にとっては年間行事の一つになっているほどです。
とはいえ、今ではその原因に先まわりして予防治療を行なうことができています。通院なさっている患者の方々がそれによって防ぐことができているということは、先に述べた「自律神経への悪戯」が原因の一つであることは明らかないでしょうか? そういう意味でも、季節の変わり目というのは決して侮ってはならないのです。
とくに、体が重だるい、眠い、動きが悪い、膝や腰に痛みを感じたり、違和感を覚えるという人は、腰痛の前兆であることが多いので、‟今”の時季は体力を温存するくらいのつもりで、くれぐれも無理をしないようにしてください。
とくに女性の場合は、男性に比べて血の巡りの関係や筋量のボリュームが少ないなど体質面からも影響を受けやすいので要注意です。足元からしっかり温めて、暴飲暴食を避け、軽い運動で血の巡りをよくし、そしてしっかり眠る。この時季は「養生」という言葉をイメージしながら過ごすことを心がけてみてはいかがでしょうか。
例えば、筋トレをする場合も、こわばった身体であるかもしれないことをしっかり認識し、ウォームアップを充分に行なってから実施するようにしましょう。
もっと言えば、運動に対する取り組みも、コロナ禍だから例年以上に運動不足に陥っているはず、だからいつもより強度を上げて……、とみずからを必要以上に鼓舞する必要はないと考えます。むしろウォームアップ的な低~中強度のものを継続するという考え方に徹するほうが、この時季を乗り越えるためには適切な判断と言えるのではないでしょうか。
季節の変わり目には、無理は禁物! なのです。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司