減量と板チョコ【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第153回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 本日2月14日はバレンタインデー。おじさんになると、息子がチョコをもらえるか? 娘は本命チョコをあげる相手がいるのか?……と、子どものことが気になります。

チョコレートはプロテインやプロテインバーでも人気の味です。バニラやイチゴと並んで古くからの定番であり、チョコレート味を愛用するトレーニーも多いと思います。また、お土産の定番商品でもあり、老若男女問わず愛されていますが、実は私はチョコレートにトラウマがあります。今回は私とチョコレートの関係についての話を書きたいと思います。最初に断っておくと、バレンタインの思い出ではありません。

過去に何度も書いているように、レスリングをやっていた学生時代は、試合のたびに8~10㎏の減量をしていました。私が現役だったのは20年以上前で、インターネットは普及しておらず、トレーニングや減量に関するマニュアルは、普通の学生の手に入るレベルでは存在しませんでした。

引退の前年に当時はまだ少なかったコンディショニングトレーナーの方と出会い、体重減少のメカニズムや、それに伴う減量法を教わり、劇的に減量がスムーズになりました。実際、大学4年時は、減量によるコンディション不良はなく試合をすることができました。しかし、それ以前は完全な自己流。知識もノウハウもないため、体重を落とすことが第一で、試合に向けてのコンディションつくりがうまくいかないことも多々ありました。

そんな自己流減量法の一つが、「腹が減ったら板チョコをひとかけら口に含む」というものです。現在の常識から考えればありえない方法ですが、当時は知識がないため、食事を制限することで体重の増加を抑えつつ練習で絞っていくという方法。栄養はビタミン、鉄分、カルシムなどを錠剤で摂取していました(これもありえない)。食べていないのでどうしてもお腹が減ります。お腹が減ると眠れず、寝不足になると練習に支障が出る。そこでお腹にはたまらず、空腹を満たせるものはないかといろいろ試し、たどりついたのが板チョコだったというわけです。

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チョコをひとかけら口に入れたところで急に体重は増えません。そのひとかけらで空腹がやわらぎ、不足している糖分が入ってくる幸福感に満たされます。何度かこの方法を実践し、減量、試合を乗り越えていましたが、正しくないやり方は必ず破綻します。この板チョコ減量法で10㎏超の減量を行なっていたあるとき、体に異変が起きました。けっこうな大きさの蕁麻疹(のようなもの)が体に出てきたのです。

急いで病院にいったところ、原因は不明。蕁麻疹の体では練習ができずに減量(と板チョコ)を中止すると、体は元に戻りました。今考えると、原因はおそらく栄養不足による体の拒否反応だと思います。しかし、当時は板チョコしか食べていなかったため、完全にこれが原因だと思い、以後、チョコレートを敬遠するようになりました。

チョコレート=蕁麻疹。こうして私のトラウマは完成。原因は違うとわかっていても、どうしても蕁麻疹が頭をよぎり、人と一緒にいるときにはチョコレートは食べられません(蕁麻疹が出てもOKの環境なら食べられる)。

これが私とチョコレートの思い出です。今はトレーニングや減量の知識を誰でも簡単に調べることができますし、それを教えてくれるトレーナーも数多く存在します。板チョコ減量法の失敗とトラウマは、正しい知識で正しく行なうことは大事という教訓になっています。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。