前回、季節の変わり目、とくに冬から春へと移行するこの時季には腰痛やぎっくり腰が多発するとお伝えしました。併せてその対策として、運動はウォームアップ的な低~中強度のものを継続し、決して無理はしてはならないことも。
では、どういった運動がオススメかと言うと(既往歴等による個人差はありますが)、以前にも紹介した、やはりウォーキングがよいのではないかと思います。ただし、のんびりと散歩感覚で歩くのではなく、普段よりも1.2~1.5倍くらい意識的にペースを上げて歩くのです。
その際、上体は体幹をしっかり意識して(とくに後面の背中とお尻を意識し、お腹が出たり反り腰にならないようにおへそと背中がくっつくように)、両腕をしっかり振って歩くことを心がけます。いわゆるパワーウォーキングと称される歩き方です。
道ですれ違った人が思わず振り返り、そのかっこいい後ろ姿に見とれてしまうほどであれば、しっかり背中とお尻を意識できているという一つの証しになるかもしれませんね(笑)。
歩き方には、その人の心の状態も端的に映し出されるものです。実際、元気のない歩き方をしている人は、その姿勢や動作を見ればわかるもの。心の状態は体に作用し、体の状態は心にも作用する——。身心とはまさに表裏一体の関係にあるといっても過言ではありません。もちろん、健康のためには背中に哀愁が漂うような歩き方よりも、先にも述べた通り、やはり道行く人にも元気を与えられるような、視線もうつむかず遠くを見据えた歩き方を心がけたいものです。
では、元気がある人とない人では、体の中の状態は一体どうなっているのでしょうか。その判断材料として、私はヒトの中心にあるコアが元気と若さの指標ではないかと思っています。そのコアを形成するために必要な要素は重心が持ち上がっているということが大切です。それらの引き揚げを形成し、維持する体の中にあるいくつかのアーチ(ドーム)。このところ話題になっている骨盤底筋や横隔膜もそれらの一つ。例えば、橋(ブリッジ)はその強度を保つためにアーチ型をしています。また野球などを行うドーム球場もアーチの集合体ではないでしょうか? 生まれながら自然にアーチが備わっている私たちヒトのカラダは本当に素晴らしいですよね! 施術をしていると、疲労が溜まりに溜まっている人の場合、これらのアーチ(ドーム)が正常に機能していないことが多く、それを取り戻すことも施術上必須となってきます。
ヒトの体の中で、最もわかりやすい判断材料になるのが、見た目にも一目瞭然である足底のアーチ(ドーム)でしょうか。アーチのない状態は、いわゆる偏平足。アーチがつぶれてしまうと、足裏で吸収されるはずの衝撃が体にダイレクトに伝わり、ひざや腰にまで負担をかけてしまいます。つまり、元気の源の一つである‟足底ドーム”の低下は、体の他の部位の元気まで奪い取ってしまうということなのです。もちろん、他のドームもしかり。
そういう観点から、このパワーウォーキングの効果を考えてみると、体の頭部、胸部、腰部、そして足部にあるそれぞれのドームを生き生きとよみがえらせてくれる可能性を秘めていると言えるのではないか、と。
すべてのドームが正常に機能していることこそ健康の証し。有酸素運動にもなると同時に、春腰痛の予防のためにも内転筋群の筋トレ&ストレッチがかなうパワーウォーキングを、ぜひ日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司