子どものコンディショニングを考える #1




私の治療院に定期的に訪れてくる患者さんを診ていると、なかなか改善されないポイントというのが次第に明確になってきます。そこで、それについて指摘すると、「実は、子どもの頃からずっと抱えている悩みなんですよ」と、内訳話を吐露する方が少なくないという現実も知ることとなりました。

アスリートのコンディショニングに関わっていた20年ほど前から幼少期のケアに大きな関心があった私は、10年ほど前から「子どものためのコース」を設けています。全体の比率から言えば、まだ1割にも満たない程度ですが、逆にこの低い数値が、子どものケアの重要性を認識している大人がまだまだ少ないことを物語っているのではないかと思います。

患者さんとそういう話題で盛り上がると、私の熱弁に急に不安になるのか(決して不安を煽っているわけではないのですが)、「今度、うちの子どもを連れてくるので一度診てやって欲しい」と依頼され、実際に子どもたちの体の状態を診てみると、肩こりや腰痛、あるいは頭痛に悩まされているケースが少なくないのです。

先日も、やはり定期的に施術に訪れている30代の男性から、「小学校受験をする子ども(男の子)の体を一度診てもらえないか」という相談がありました。受験は学力だけでなく、例えば、両手を開いた片足立ちから上体を前に倒しつつ飛行機のような体勢をとる体力テストもあるそうで、ご自身の経験から私の施術を受けると、体のバランスが整い実際にパフォーマンスがアップし安定感が生まれてくるのではないか、と思ったそうです。

私の施術の基本は、体の中軸となるコアを阻害する要因を一つ一つ取り除き、背骨周辺のアライメントを整えていくことを旨としています。したがって、パフォーマンスがアップしたというわけではなく、正確に言えば、それによって本来、自身が備えているパフォーマンスを取り戻すことができたということなのかもしれません。

外遊びの機会が減り、ジッと椅子に座り続けて受験勉強に取り組む時間が圧倒的に増えるわけですから、たとえ子どもであろうと、体が凝り固まっていくのは当然と言えば当然のことです。

もう20年以上も前になるかと思いますが、スイスでバランスボールに座って授業を受けている小学校が話題になったことがありました。なぜ話題になったかと言えば、その授業風景がとても斬新だったことはもちろんですが、それによって学力が上がったということが最大の要因でした。不安定なバランスボールに座ることは、体幹を強化すると同時に姿勢を整えてくれることに貢献します。すると、脳が活性化され学力にも好影響を与えたということなのでしょう。

昭和の頃には、子どもがケアを受ける時代がくるなんてことは全く想像もできませんでした。しかし、今は日本の未来のためにも、子どもの頃からケアの重要性を説いていくことが求められる時代になってきたと言えるのではないでしょうか。

山本康子(やまもと・やすこ)

鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。

アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司