サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第86回は、2020年秋に話題となったスケソウダラが持つ筋肥大効果について。
■キーワードは「ペプチド」
スケソウダラは白身の魚で、ほぼ脂質や糖質は含まれていませんので、究極の高タンパク・低脂質・低糖質の食材と言えるかと思います。そういった意味では筋肉の材料となるアミノ酸が豊富に含まれていますから、筋肥大には向いた食材と言えます。
ただ、このニュースはもう少し奥が深そうです。
白身の魚ということは速筋でできているわけで、速筋を増やしたければ速筋を食べようといったような発想かもしれません。これはあながち都市伝説的は話ではなく、例えば皮膚や関節のコラーゲンの再生にはコラーゲン(ペプチド)がいいという理屈に通じるものかもしれません。
以前はコラーゲンを摂っても、結局はアミノ酸になって吸収されるために、お肌や関節にはあまり意味がないという主張が主流でしたが、今ではコラーゲンペプチドはコラーゲンの生成を促進させることが証明されています。
ここでキーとなるのがペプチドです。ペプチドという概念は広いのですが、ある特殊なペプチドはアミノ酸にまで分解されずに、比較的大きな分子量のままで体内に吸収されることがわかっています。そのペプチドは単に体の材料として使われるのではなく、コラーゲンのようなタンパク質の合成であったり筋肉の分解抑制であったりと、体に有益な機能を発揮するというものです。
このようなペプチドをシグナルペプチドと呼びます。非変性Ⅱ型コラーゲンが有名ですが、もしかするとスケソウダラの速筋にもそういったシグナルペプチドが存在しているのかもしれません。まだこれから研究なり解明がされていく世界ではありますが、なんだかワクワクさせてくれるニュースですね。もしかするとトレーニングの要素とは関係なく速筋が増えてくれるという可能性もあるかもしれません。
ちなみにスケソウダラは、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージといった練り物系の加工食品に使われているので、意外に身近でもあります。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。