多くのトレーニーが好むサバのよさってなに?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第87回は、鶏のむね肉や牛の赤身などとともに筋肥大の助けとなっているだけではなく、体にもいいサバの素晴らしさについて。

■サバの脂質には高い価値がある

サバは高タンパク・低糖質の代表的な食材ですのでトレーニーや糖質制限をしている人に人気を博しており、これはサバ缶も同様です。

しかも脂質は豊富ですが、なんといってもEPA、DHAといったω-3(オメガスリー)系不飽和脂肪酸が圧倒的に多い食材なので、普通の高脂肪食材とは少し意味合いが違ってきます。なぜならば、かなり意識をしても私たちが摂り難い脂質だからです。

ω-3系の脂肪酸といえば心疾患リスクや高脂血症にいいということから、例えば血液サラサラ効果を期待する人が多いかもしれませんが、じつはこの血液サラサラ効果は主としてEPAの働きに起因しているものです。両者の違いを大まかに言えば、血液や血管がEPAで、脳を中心に神経系の発達に効果があるのがDHAということになります。体内でDHAがEPAへ変化することはありませんが、その逆は起きるという違いもあります。

日本でのω-3系脂肪酸の話題はDHAがスタートだったので、知名度としてもDHAの方が高いかもしれません。日本人の子どもの知能指数が高いということが注目され、その理由が欧米人と比較して魚を多く食するからではないかということで、頭がよくなる栄養素として取り上げられました。

しかし、研究のデータ的にはω-3系脂肪酸は圧倒的にEPAのほうが多く、EPAに関しては100%純品の医薬品としてのデータが豊富なため、食品ではあるものの薬理作用として証明されています。また、最初に注目された時期はEPAが1960年代後半と、圧倒的に長い歴史があります。グリーンランドの先住民族であるイヌイット族は、デンマークの白人と比較して心血管系での死亡率が低いことが話題となり、その理由を探していく中で彼らが主食としていたアザラシや魚類に含まれるEPAの働きではないか、ということが疫学調査でわかったのです。

これらEPAとDHAがしっかりと含まれているというだけで、サバは十分に価値のある食材と言えます。またビタミンもまんべんなく含まれていて、とくにビタミン12とビタミンDが豊富です。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。