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角田信朗が語る 傾奇者の肉体論③「肉体を究極まで絞ると、皮膚が筋肉に張り付いているような感じになる」

還暦を迎え、ボディビルダーとしても活躍する角田信朗さんが語る、傾奇者の肉体論。最終回となる3回目は、筋トレでパフォーマンスの向上を目指しているアスリートに対してのアドバイスをしてもらった。

――それにしても、よく初挑戦で結果を出せましたね。

「1年目は、壮絶な減量との闘いでした。最後のひと絞りをするためにジムのエアロバイクで有酸素をしていると、死に物狂いでぺダルを漕いでいるはずなのに、気づいたら液晶パネルがポツッと消えているんです。つまり、漕いでいるつもりが無意識にペダルが止まっちゃっているんですね。その瞬間、自然に涙が出てきて、それを拭っての繰り返し。そんな状況でした。アレ、もう一回やれと言われても、もうできないかも(苦笑)」

――執念だったんですね。

「ファイトマネーをいただいて闘う試合なら別として、趣味というレベルでここまで自分を追い込むのは、やっぱり変態の集まりです(笑)」

――そうでしょうね(笑)。でも、トレーニングを見させていただきましたが、追い込み方は半端ではないですよね。

「何のために、こんなキツイことをやっているんだろうと思うこともあるんだけど、結局これって自分を整えるための『行』なんですね。刀を、抜くことはなくても、いつでも切れるように研いで鞘に収めておく、そんな感じです」

――ボディビルダーは減量のプロとおっしゃっていましたが、大会で結果を出した今、減量やダイエット法で気づいたことはありますか?

「ビルダーの世界では、オフに食べて重いのを持って体をデカくして、シーズンに合わせて減量というやり方が一般的だったようですが、これは、格闘技の減量にも通じることなんだけど、普段から極端な増量・減量を繰り返すのではなく、ある程度の減量幅を決めたら、それをキープしながら仕上げていく、とか。個々で独自の減量法を試行錯誤するパターンになっているような気がします。

一つのやり方で成功して、翌年も同じやり方でまた成功するかといったら、そうではなかったりとか、それこそ、魑魅魍魎の世界(笑)だから、経験を積んだベテランの方が完成度が高いんですね。

塩分と水分のコントロール、ナトリウムとカリウムの比率で仕上がりが変化したりね。ナトリウムが多いと、皮膚の下に水分が溜まり浮腫んだ状態になるのを、極端な塩分カットは危険なんで、カリウムの量を増やして浸透圧を変えてやると、皮膚の下の水分が筋中に移動して、そこに、カットしていた糖質を戻してやると、筋肉が膨らむ、とかね。ここまでくるとボディビルも完全に科学なんです」

――自分の肉体が変わる様子が、摂取した成分によって顕著にわかるんですね。

「大会当日も、会場に着いてから予選まで、もしくは予選から決勝の間に何を摂取するかが大切になってきます。朝よかったのに、夕方になると体が浮腫むとか。その逆もありますね」

――究極まで肉体を絞って、見えてきた世界はありましたか?

「肉体を究極まで絞ると、皮膚が筋肉に張り付いているような感じになって、たった100グラム体重が落ちただけで、体の表情がガラッと変わるんです。仕上がった自分の筋肉を鏡に映すと、これが本当に自分の体なのか?!と思うほどに、研ぎ澄まされてくるんですね。

木澤君のいう、『未だ見たことのない世界』というのはこのことだったのか(笑)。この面白さにハマってしまった人たち。それこそが、コンテストビルダーなんでしょうね(笑)」

――現在は、トレーニングの比重はどこに置かれていますか。

「僕のトレーニングは、勿論、可能な限り高重量を扱う、というのも絶対に外せないポイントではあるのだけれども、それプラス、関節に優しく筋肉に厳しいアプローチの仕方、これはナルシス山本君から学んだ技術です。

彼も若い頃は、すごい高重量を扱って、頸椎を損傷して体が部分的に麻痺を起こしてしまったり、という苦い経験があるんです。その経験から特殊なギアを考案して、関節に負担をかけず目的とする筋肉に的確にアプローチするメソッドを完成させたんです」

――革新的なギアなんですね。

「このギアは、確かに革新的なんですが、トレーニングの本質を理解した上で使用しないと、宝の持ち腐れになるんですよね。コロナ禍でジムが閉鎖された時、マシンやフリーウエイトが使えない中、近所の公園の鉄棒やジャングルジムを活用して、このギアの使い方を徹底して研究した結果、初めてその効果をあらためて実感することができました」

――意味を理解していないと自己満足になってしまうんですね。

「スポーツ選手が、ウエイトトレーニングで陥ってしまう失敗例として、重量=数字にとらわれてしまい、パフォーマンスを高めるための手段として取り入れたはずのウエイトトレーニングが、それ自体、目的になってしまうことなんですね」

――たしかに数字を気にする人は多いですね。ジムでは高重量を競い合うようなことが、なぜか起きてしまいます。

「筋トレとは言ってみれば、エンジンの排気量を上げるための作業なんです。スピードや技術力を高める作業は別にある。それをうまくコーディネートしてこそ、ベストパフォーマンスが発揮される。

鉄アレイを持ってパンチを打ったらスピードがつくかと言ったら、そうではない。野球で重いバットを素振りをしていればスイングのスピードが増すと勘違いするのも、同様です。重いバットの後に軽いバットでスイングすると速く感じるかもしれませんが、それは軽いと感じているだけなんてですね。

重いバットでスイングをすれば、その時のスピードを脳は記憶しますので、スイングのスピードを上げようと思ったら、実際に振る試合用のバットを使って、それを速く振るようにするのはエンジンの排気量、つまり筋力そのものを上げていかないといけないんです」

――それは、わかりやすい例えですね。筋トレは、以前の常識が常識ではなくなるほど、進化するスピードが速いように感じます。

「これはね、空手も同じなんですけど、毎日が気づき、勉強の連続です。ナルシス山本君のギアもそうですけど、自分に合った使い方、鍛え方を見つけることが大切だと思います。その結果、自分なりのやり方を発見した時のうれしさ、インプルーブできた時の達成感があるから、トレーニングは辞められないんでしょうね」

――将来的な目的、目標はあるんでしょうか?

「ボディビルやトレーニングに関してですか? 今は、コンテストは一段落と思っていますが、マスターズの60代には、難波文義さんという心技一体の素晴らしいレジェンドの存在がありますので、もしかしたら突然、難波先輩の胸をお借りして、60代のマスターズに出場するかもしれませんね(笑)」

――角田さんも、究極の負けず嫌いですね(笑)。

「肉体を鍛えることに終わりはない。還暦とか関係なしに傾奇者の生き方で、死ぬまで鍛えてシャレにならないジジィを目指します(笑)」

妥協なきトレーニングを続ける角田さん。還暦を迎えた今もなお肉体を進化させている

<完>

取材・撮影/松井孝夫

協力/ゴールドジム大阪中之島店

マネジャー兼トレーニングパートナー/内藤美希


角田 信朗(かくだ のぶあき)
1961年 4月11日生まれ、子供の頃はいじめられっ子であった反動から、空手を習うようになる。高校2年で極真空手の芦原道場に入門。関西外語大学卒業後サラリーマンとして働きながら空手を続け、K-1ファイター・競技統括やレフェリー、タレント、俳優、歌手としても活躍。正道会館空手総本部師範。近年はボディビルダーとしても活躍し、2016年大阪ボディビルフィットネス選手権大会では三冠完全優勝を達成。中学・高校の英語教員免許を持つ文武両道の万能ファイター。

 

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