スポーツ深読みシリーズ~車いすバスケットボール【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第169回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 先日、ジムに行く前にエアコンの入りタイマーをセットして出発しました。帰ったら部屋は冷え冷えになっていると思って戻ると、部屋はムシムシ。冷房ではなく暖房になっていて死ぬかと思いました。

 

さて、今週は不定期でお届けしている「スポーツ深読みシリーズ」です。今回はパラリンピックの花形競技、車いすバスケボールを紹介しましょう。

 

まずは基本的なルールから。車いすバスケットボールは、脊髄損傷や切断など下肢に主な 障害のある選手を対象とした競技。回転性や敏捷性の高い専用の車いすに乗って行なうバスケットボールです。ボールの大きさやコートのサイズ、ゴールの高さや出場人数など基本的なルールはオリンピックのバスケットボールと同じ。10分4クォーター制で合計得点を競います。

 

通常のバスケボールとの一番の違いは、5人のメンバー構成における独自のルールです。選手は各々障害の重さによって持ち点があり、障害の重い順に1.0点~4.5点までの持ち点が決められています(0.5点刻みで8段階)。1.0点~2.5点の選手を「ローポインター」、3.0点~4.5点の選手を「ハイポインター」と呼びます。コート上の5人の持ち点の合計は14.0点以内と定められています。選手交代に制限はなく、障害の程度にかかわらず、出場機会を得られるようになっています。

 

もう一つの大きな特徴はドリブルの仕方です。写真のようにボールを保持して車いすを手で漕ぐことを「プッシュ」と言い、3回以上続けてプッシュするとトラベリングの反則になります。2プッシュ以内に1ドリブル、もしくはパスをしなければいけません。このようにドリブル&保持を繰り返すため、ダブルドリブルのルールはありません。

選手の足となる車いすは、日常生活用のものとは異なり、競技用としてタイヤが「ハの字」に取り付けられているので、素早いターンが可能でスピードも出やすくなっています。車いすのダッシュ、ストップ、ターンを選手はすべて素手で操作します。急なストップの際は、手が焦げるようなときもあると言います。ぜひ、そのチェアワークに注目して見てほしいところです。

 

車いすのシートの高さは持ち点が3.0点までの選手は63㎝以下、3.5以上の選手は58㎝以下と定められています。この車いすに座ったまま、ジャンプも下半身の力も使わず、通常と同じゴールの高さにシュートを決めるわけですから、選手たちがいかに高い能力を持っているかがわかると思います。

 

ゴール下では接触プレーも多く、選手が車いすごと転倒したり、あるいはタイヤがパンクしたりなんていうシーンも見られます。実は競技用車いすのタイヤはボタン一つであっという間に取り外しができるようになっています。そのため、パンク時は瞬時にタイヤ交換ができるのです。

 

車いすだからこそのスピード感と激しいコンタクト。巧みなチェアワークやバスケットスキル。日本代表は海外の選手と比べると全体的に小柄ですが、攻守の切り替えを武器とした「トランジションバスケ」が魅力です。パラリンピックが開催の際には、ぜひ車いすバスケボールに注目してみてください。

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。