サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第114回は、タンパク質が肝臓や腎臓に与える負担について。
■プロテインは許容量を超えても摂取できてしまう
これはイエスともノーとも言えます。つまりどの程度の飲み過ぎか、またどの程度継続して飲み過ぎているか、さらには元来、肝臓や腎臓が弱くないかなどの条件にもよるからです。
プロテインは、体内でアミノ酸へと分解されます。アミノ酸はアミノ基(-NH2)がついているので、アミノ基転移酵素によってそのアミノ基が外されなくては代謝が進みません。体の材料となったり、一部はエネルギーとして使われたりしますが、アミノ基はアンモニアという毒性を持った物質になるため無毒化していかなくてはなりません。
転移されたアミノ基はαケトグルタル酸を受け皿として、一旦そこからグルタミン酸へと集約されます。そしてグルタミン酸が肝臓や腎臓へ運ばれて、アンモニアが分離され肝臓ではオルニチン回路によって無毒化され、また腎臓ではアンモニウムイオンとして尿へと排泄されていきます。このように、プロテインに限らずタンパク質は必ず肝臓や腎臓を使うことになります。ところがタンパク質を肉や魚や豆類から摂ろうとした場合は、満腹という非常にわかりやすいブレーキがかかります。
一方、プロテインの場合は、それがメリットでもあるのですが、許容量を超えてもどんどん摂取できてしまうのです。肝臓は沈黙の臓器と言われるように、非常に我慢強く、弊害の出にくい臓器でもありますが、逆に痛めてしまうと再生が困難な臓器でもあります。単発的に、あるいは数日間飲み過ぎたなどという程度では何ら問題はありませんが、常態的に不必要な量を飲み続けるようなケースでは負担がかかるのも事実です。
どれくらいが不必要な量かは個人差が大きいので一概には言えませんが、体重あたり2.5gを超えるタンパク質は筋肥大の効果が頭打ちになっていきますから、食事も含めたトータルのタンパク質摂取量の目安としてもいいかもしれません。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。