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パーソナルトレーナー、コンテストへの道~その一

NESTA JAPANの理事を務め、数多くの著書を持つ澤木一貴氏(SAWAKI GYM代表)が、8月15日に開催される東日本フィットネス選手権メンズフィジーク40歳以上172㎝以下級に出場する。すでにパーソナルトレーナーとして確固たる地位を築いているなかで、なぜコンテストに出場するのか? その思いを聞いた。

――こうしたコンテストの出場は初めてですか

澤木:実は16年前くらいにJBBFのボディビルには出たことがあります。ガリガリ真っ白で(笑)。そのときは専門学校の先生をしていて、学生の引率をしながら“ついで”という感じでした。当時は本物のボディビルダーはいても、自分で体を鍛えてという人はあまりいませんでした。自分自身も知識がまだまだで、脂肪を抜いた食事を摂っていたら、筋肉がごっそり落ちた記憶が懐かしいですね。

――すでにパーソナルトレーナーとして地位を築いた今、なぜあえてボディメイクをして大会に出ようと思ったのでしょうか?

澤木:理由は二つあります。一つは弊社の昨年の新入社員で2年目の佐々木優馬がフィジークに出ている選手でもあったこと。ウチは社員同士の仲がいいので、みんなで何か目標を立ててやってみようという話がありました。ジムによってはスパルタンレースに出たり、マラソンをやったりといろいろあると思います。僕らは優馬がフィジークに出ていることもあって、昨年10月にみんなで目指してみようという軽い気持ちで始めました。

――みんなで目標に向かって頑張ってみようとなったわけですね。

澤木:はい。もう一つは現在がボディメイクブームだということです。コンテストも増えましたし、ボディメイクを成功させた人が、トレーナー業界に参入してきてYouTuberやTikTokerとして結果を出しているという現状もあります。僕は彼らに拒否反応はなく、純粋にすごいなと思っています。ただ、それで成功しているジムが増えているとしたら、ウチのジムはすごく古いほうになってきているので、一度同じ土俵に乗って勝負してみようという好奇心ですね。

――元々、SAWAKI GYMは高齢者の健康づくりや機能改善、あるいはアスリートのパフォーマンスアップというところがメインで、ボディメイクがメインではありませんよね。

澤木:そうですね。 健康づくり、健康増進、リハビリの方も受け付けられるとか、子どもや高齢者、アスリートなど対象は多岐にわたります。パーソナルトレーニングというのは、クライアントの要望に対して応えるものなので、「パーソナルボディメイク」ではないとずっと思っていました。しかし、あまりにも時代的に「パーソナル=ボディメイク」という側面が強くなってきているので、我々がそちらも押さえたら強みになるのではないかと考えた部分でもあります。

――ボディメイクの部分はこれまで培ってきた自分の知識で自己流に行なうものなのですか? それとも特化している人に指導を受ける形になるのでしょうか?

澤木:自分がやってきた機能解剖学や食事の知識、トレーニングの知識があれば、健康的な良い体をつくることはできます。ただ、ボディメイクの世界にはボディメイク特有の鍛え方があるので、それは習わないとわからない部分があるので、教えてもらっています。日々勉強ですよね。結構形から入るタイプなんです。ランニングはナイキの厚底シューズを履いていますし、ベンチプレスをやるときはリストラップをつけたり。他にも雑誌を見て、こういうトレーニングをやってみようと考えたり、パーソナルトレーナーの方にお願いして一緒にトレーニングをさせてもらったり、いろいろやっています。

――これだけのキャリア、経験があっても勉強をしているわけですね。

澤木:この経験は今後のトレーナーとしての活動にも生きてきますから。ウチの4人のトレーナーがボディメイクで何らかの結果を出すことによって、これまでの健康やパフォーマンスアップだけでなく、そちらの方向に行きたいクライアントも獲得できるかなと。今までもボディメイク希望の方はいましたが、少数派でした。ウチはお客さんを評価して問題がある点を発見して、それに対してアプローチするという超古典的なパーソナルをやっていたわけですが、純粋に筋肉をつけたい、カッコいい体にしたいというニーズにも応えていけたらなと思っています。

――ご自身がボディメイクに取り組んでみて発見はありましたか?

澤木:雑誌などを見ていろいろなトレーニングを知識としては知っていても、自分で実践したことはありませんでした。たとえば三角筋の中部線維の後部だけを狙うといったトレーニングは、必要性を感じておらず、意味もよくわからなかったのですが、実際にやってみるとピンポイントにそこにだけ効くんです。三角筋後部を鍛えるときは、肩甲骨の動きが邪魔をしてしまうので外転移で固定します。つまり猫背をつくるんです。そのほうが刺激が逃げないので、一般的には変な姿勢でやることになります。知識はあってもやってこなかったことを実際にやって効果を実感した。それが収穫ですね。

――逆にボディメイクの難しさを感じた部分は?

澤木:コンテストに向けて本格的にトレーニングを始めたのは2月からで、食事は6月からしかやっていません。自分比では変わっていても、究極を目指す皆さんはもっとストイックにやっているので、これはやってみて高い壁だなと感じました。

――食事のコントロールはストレスも大きいですからね。

澤木:思ったよりはストレスなく減らすことができました。僕は酒飲みのトレーナーなんです。毎日飲んでいて多い日は3リットルくらい飲みますから。ただ、お酒の量は10分の1くらいに減りました。5月にウエストを測ったら恥ずかしながら89㎝もあったんです。自分は大胸筋がデカイのでお腹があまり目立たないんですけど、だいぶウエストが太かったんです。でも今は72㎝になっています。ベルトの穴が一番太いところから一番細いところになりました。筋量をしっかり残しながらお腹の肉だけを落とせたので、自分的にはトライして良かったなと思います。

――体重や体脂肪はどのくらい減ったのでしょうか?

澤木:体重は76㎏から66㎏まで10㎏減りました。体脂肪は最初20%くらいあって、食事制限して1ヶ月で14.5%、今は11%くらいで大会当日は9%くらいを目指しています。プロレスの新弟子みたいに教えてもらっています。今のトレーナーは多岐にわたっていて、僕みたいなオーソドックスなタイプは少なくなっています。オーソドックスなトレーナーは深い知識を持っているかもしれないけど、どうしても広く浅くなりがちです。ボディメイクならボディメイクの深い知識が必要ですし、競技特性に合ったトレーニングというなら、たとえば今後ゴルフの選手のトレーナーになるならゴルフのことをもっと知らないといけない。完璧な人はいないですから、学ぶためにはベテランであってもルーキーになったほうが良いんじゃないかなという気がします。

――今回ボディメイクにトライしたことで、さらに知識を持ったトレーナーになれるということですね。

澤木:そうですね。本来は大会の結果にもこだわらないといけないのでしょうけど、今回は結果よりも過程にこだわってやってきました。今後は結果にこだわって毎年出るようになってしまうかもしれないですけどね(笑)。

 

取材・文/佐久間一彦
写真/森本雄大