サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第137回は、海藻を摂ることの栄養的なメリットについて。
■海藻の栄養が感染症の悪化を軽減する可能性も
海藻は海に生息する藻類で栄養価に富んでいます。
日本は海で囲まれていますから、海藻はまさに私たちにとっては自然の恵みの代表と言えるかもしれません。生息する海の深さに応じて、浅いほうから緑藻類、褐藻類、紅藻類と分けられ、含まれる成分にも違いが出てきますが、概してミネラルや食物繊維が豊富である点は共通です。
身近な青海苔は最も浅い緑藻類で、ワカメ、昆布などはもう少し深い個所に生息する褐藻類です。食物繊維は主として水溶性のものですので、腸内環境を整えるという点で優れています。ミネラル的には鉄やカルシウムが豊富なので、私たちが不足しがちな栄養素が揃って含まれていることになりますから、アスリート向けの食事においても微量栄養素を整えるために、ワカメや昆布などの汁物を食事に加えるというのも理解できます。
現在は新型コロナウイルスに苦しめられている私たちですが、1918年から2年間にわたって世界中の1/3が感染したと言われるのがスペイン風邪です。ところが、日本では致死率が諸外国に比べて低かったそうで、そこに海藻が関係しているのではないかと言われています。海藻に含まれる食物繊維にフコダインという成分があり、それがサイトカインストームを抑制していた可能性が高いのです。
サイトカインストームとは感染症が悪化する原因とも言われるもので、ウイルスに対して免疫細胞から過剰に放出されてしまうことで健康な細胞や臓器にまで攻撃を加えることになり、結果として炎症反応が重症化していくという現象です。コロナ禍において、海藻がどの程度効果を発揮しているかは現時点では不明ですが、致死率が比較的低いという点においては海藻の栄養が役立っている可能性はあるかもしれません。
一点だけ注意点として、海藻にはヨウ素も多く含まれています。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料として重要ですが、基本的には足りている栄養素であり、逆にヨウ素の過剰摂取は甲状腺の機能低下を招く恐れがあるので、その点においては海藻の過剰摂取は避けておきたいのです。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。