アルギニンの効果は?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第138回は、アルギニンとは何か?という質問にお答え。

■肝臓内で解毒作用を受け持つオルニチン回路のひとつ

アルギニンはアンモニアを解毒するオルニチン回路の中間体で、シトルリンとアスパラギン酸から合成されます。体タンパク質を構成する20種類の中のひとつで、非必須アミノ酸ではあるものの消耗度が激しいことから、準必須アミノ酸と位置づけられています。

アルギニンはオルニチン回路を経て肝臓で作られるのですが、肝臓内でのアルギニンは加水分解されてすぐに尿素とオルニチンになるため、実質的には肝臓内でアルギニンの合成はなされないと言えます。アルギニンのほとんどは、小腸と腎臓によって合成されています。まず小腸にある酵素によってアンモニアから合成されたシトルリンが門脈血中を経て、腎臓でアルギニンが作られていきます。そして腎臓で作られたアルギニンが血液を経て全身に運ばれていきます。

さまざまな機能が期待されるアルギニンですが、とくに主要な役割と言えば、オルニチン回路のひとつであること、一酸化窒素の基材として使われること、コラーゲンの構成アミノ酸であるプロリンの合成に必要なことなどが挙げられます。まずアルギニンの主要な役割の中でも注目に値するのが、オルニチン回路内での役割です。そもそもオルニチン回路とは何かですが、プロテインでも肉でも魚でも、摂取したタンパク質は体内でさまざまなアミノ酸にまで分解されて吸収されます。この吸収されたアミノ酸は、体内において肝臓を通してアミノ酸のプールである血液に入っていきます。

一方で筋肉をはじめとする体内のさまざまな組織はタンパク質で作られていますが、そのタンパク質は新陳代謝によって、日々その一部が壊れてアミノ酸となって放出されていきます。また摂取して血液中に入っていったアミノ酸も利用されなかったり、過剰だったりした分は体内には貯えておけないため、分解されて排泄されることになります。アミノ酸が分解されるには、まずアミノ基(-NH2)が放出されます。するとこのアミノ基はアンモニア(-NH3)という物質へと変化します。アンモニアは体内において極めて有害な物質であるため、これを肝臓が無毒化して尿素へと転換しているのです。つまり栄養(タンパク質)を摂る時も摂り終わった時も、肝臓という臓器を経由していているわけです。

オルニチン回路とは肝臓内で解毒作用を受け持つ回路であって、ここの主要な成分となるアミノ酸がオルニチン、アルギニン、シトルリンなのです。この3つのアミノ酸を上手にバランスよく摂取することによって、解毒を受け持つオルニチン回路が活性化されて、よりスムーズにアンモニアを尿素へと解毒していきます。このオルニチン回路という解毒システムが備わっているから、私たちは安心してタンパク質やアミノ酸を思う存分に摂取することができるのです。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。