サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第142回は、これまでのダイエットの概念を覆した高脂質食ダイエットについて。
■実質的には「低糖質ダイエット」
これは当たり前の話ですが、高脂質だけではダイエットはできません。高脂質な分、しっかりと糖質を抑制していく必要があります。つまりこれは、低糖質ダイエットという表現のほうが適切かもしれません。
また、糖質を抑制することによるデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。私たちの身体は糖質と脂質を二大エネルギー源としていて、運動強度などに応じてその割合を上手に変えています。お金に例えるならば、糖質が普通預金で脂質が定期預金のようなイメージです。普段の使い勝手を言えば圧倒的に普通預金なわけですが、大きな買い物などの場合は普通預金では賄いきれませんので定期預金を使うことになります。
高脂質食として糖質を摂らないようにすると、普通預金は枯渇して残金がなくなっていきますが、定期預金のほうにはどんどんとお金が入ってくるので、貯めるための定期預金ではありますがやむなく解約をし続けるような状態になります。PFCバランスを極端に脂質寄りに傾けることによって、体内で脂質をメインのエネルギーとして使っていくようにするわけです。
ただし、脂質というのは元来貯めるのに適した栄養素ですから、いかに糖質が足りないからとはいえ使うような環境をつくってあげなくてはなりません。つまり運動の要素が必要になってくるのです。しかし糖質がないと運動強度は上がりませんから、比較的緩やかな強度の運動をやや長めに行なうような組み合わせが必要となります。これがうまくいくと、単なる糖質によるカロリー制限ではなく、ファットアダプテーションになっていきます。
また糖質を抑制することによって、脳のエネルギー源が足りなくなるため集中力が途絶えたり、筋肉の分解が進んだり、食物繊維が足りないために便秘気味になったりと、想像以上の不具合が起こる可能性がありますので、その点は要注意と言えます。そして糖質は意外にも色々な食材に含まれていますから、自分では抑制していると思っていてもじつは糖質を摂っていたというようなケースもあります。しっかりと管理して、デメリットも理解した上で行なえば可能だと思います。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。