ケトジェニックダイエットの正しい方法は?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第143回は、糖質制限ダイエットの一種であるケトジェニックダイエットについて。

■脂質をMCTにするとケトン体がつくられやすくなる

これは前回(第142回)の回答とかぶる部分が大きいかと思いますが、ケトジェニックダイエットと単なる高脂質・低糖質ダイエットとの違いは、ケトン体をエネルギー源として使うようになっているか否かです。つまり脂質をエネルギー源としているかだけではなく、それがケトン体として使われているかどうかという点が重要になってきます。

したがって、相当しっかりとした糖質制限を行なわないとケトン体はつくられないため、PFCバランス(三大栄養素「タンパク質」「脂質」「炭水化物」のバランス)を断糖レベルにまで下げていくことになります。また、少し長めの期間をかけないとケトン体はつくられていかなかったり、途中で糖質が入る状態ができてしまうと、今度はケトン体から糖質へとエネルギー源が切り替わったりもします。

脂質をしっかりと摂取して且つ糖質を制限すると、たしかに体内では脂質の利用効率が上がっていきますが、これだけではケトジェニックダイエットが進むとは限らないのです。やはりキーとなるのはケトン体がつくられていくかどうかです。ケトン体をつくる上で利用価値が高いのが中鎖脂肪酸(MCT)です。低糖質の状態で脂質の部分をMCTに切り替えることで、ケトン体がつくられやすくなるのです。MCTはココナッツなどに含まれる脂肪酸で、通常の脂質と異なり炭素の数が8~12個と短い脂肪酸です。

通常の脂肪酸はリンパ管から吸収されるのですが、MCTは消化吸収経路が門脈から肝臓に運ばれるため、通常の脂肪酸(長鎖脂肪酸)のように蓄積されるのではなく、その大半がケトン体に変換されてエネルギーとして使われるという特徴を持ちます。もともとは栄養失調の時のエネルギー補給などに活用されていた脂質ですが、ケトジェニックダイエットのようなシーンやマラソンのような持久系の競技での活用が今後、期待されます。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。