掛け声職人登場? コロナ禍で垣間見えた「ミスター早稲田」の一工夫とは




11/7(日)早稲田大学にて、学園祭の名物企画である「ミスター早稲田」が開催された。ミスター早稲田とは、早大バーベルクラブ主催の”学内No1マッチョ”を決める大会。同サークルの部員にとっては憧れの舞台であり、ビッグタイトルへの登竜門となっている。

昨年はコロナの影響で中止を余儀なくされたミスター早稲田も、今年は悲願の開催が実現した。待ちわびた開催に、選手たちも喜びを爆発させているようだった。

フリーポーズでは、ホール全体を選手たちが練り歩いた

大成功を収めたミスター早稲田だが、開催への道のりは平坦ではなかった。早大バーベルクラブコーチの和田駿氏は、「厳しい状況でしたが、何とかやり切ることができました。試行錯誤したからこそ前に進めたと思います」と話す。

今回は大学全体が入場制限を設けていたこともあり、観客数は例年の4分の1に減少。もちろん飛沫防止のため、観客からの声援や掛け声も禁止。選手への投票もWebからの入力と、司会のアナウンスにうちわを叩いて反応といった形で行なわれた。

かつてのミスター早稲田とは異なる状況だが、大会を盛り上げたいという思いは変わらない。そんな中で早大バーベルクラブが挑戦したのは、大会に「掛け声職人」を設けるという工夫だった。これは観客席前方の和田氏、同サークルOBの石田篤慶氏が担当となり、マイクを用いてボディビルの「掛け声」を贈るというものだ。

早大バーベルクラブOBの石田氏(左)と同サークルコーチの和田氏(右)

「腹筋がエクセルのセルだな!」

「筋肉の満員電車!男性専用車両!」

和田氏と石田氏のマイクから、どこか懐かしい掛け声が響き渡る。そのたびに客席からは笑顔がこぼれ、ステージの選手も生き生きと躍動した。観客席とステージに、まるで一つの橋が架かっているようだった。

掛け声の依頼を受けた石田氏は、「正直OBからすると安全面から、掛け声は不要じゃないか?というのが意見だったんです。ただ現役生が、『それだと盛り上がりに欠けるので、人数を制限してやりたいです。力を貸してくれませんか』と頼んできたんですね。これを聞いて、がんばっている選手のためにも掛け声をしたいと思ったんです」と発案の経緯を語ってくれた。

和田氏も、「コロナ禍で色々とやってみて、見えたものもありました。“コロナ禍でもできた”ということが残って、来年はもっと盛り上がってくれたらと思います」と確かな手ごたえを口にした。

工夫で状況は変えることができる。コロナ禍でのミスター早稲田の成功が、学生ボディビル界の新たな可能性を予感させた。進化を続ける早大バーベルクラブから、今後も目が離せない。

取材・文/森本雄大
写真/森本雄大