知ればパフォーマンスアップ間違いなし! 「鴻江理論」を紹介〔前編〕




アスリートコンサルタントの鴻江寿治さんは、プロ野球の菅野智之選手、千賀滉大選手、岡本和真選手、ソフトボールの上野由岐子選手ら、数多くのトップアスリートのコンサートとして活躍している。その鴻江さんは人の体が猫背型の”うで体”と反り腰型の”あし体”に分類されるという、鴻江理論を確立。運動時のケガ予防、パフォーマンスアップはもちろん、日常生活にも良い効果を生むであろう、この理論を紹介していきます。

人間は背が高い人もいれば低い人もいます。太っている人がいれば痩せている人もいます。また、体が硬い人がいれば柔らかい人もいますし、足が長い人がいれば短い人もいます。つまり、まったく同じ体の人は一人もいないということです。

 

人それぞれ体の特徴が違うのに、体育の授業や部活などで運動をするときは、全員に同じやり方が指導される場合がほとんどです。たとえば走るとき、「腕を大きく振りなさい」、あるいは「足を高く上げなさい」という指導を受けて、「そのやり方よりこっちのほうがやりやすいのに…」と違和感を覚えた経験のある人もいるのではないでしょうか?

 

その違和感は正解です。自分の体の特徴に合った動きをしなければケガにつながったり、パフォーマンスアップができなかったり、不利益を被ります。逆に人間は体の特徴に則った動作を身につけることができれば、ケガの予防やパフォーマンスアップにつなげていくことができるというわけです。

 

アスリートコンサルタントとして、数多くのアスリートを指導してきた鴻江寿治さんは、人間の体は大きく2つのタイプに分類できるという、「鴻江理論」を確立しました。3回にわたる集中連載として、この鴻江理論を紹介していきましょう。

 

「鴻江理論」によると、人間は猫背型の“うで体”と反り腰型の“あし体”に分類されます。骨盤の開き方に左右差があることがその原因で、右側の腰が閉じて(前傾して)、左側の腰が開いた(後傾した)状態が“うで体”で、その逆が“あし体”になります。

 

骨格のねじれは体の使い方、力の出し方に当然影響があります。“うで体”は体の内側、腹筋をよく使い、“あし体”は体の外側、背筋をよく使う傾向があります。“うで体”はその名の通り、腕主導で動作を始めたほうが体を動かしやすく、“あし体”は足主導で動作を始めたほうが体を動かしやすいという特徴があります。骨格のねじれと動作の関係は2018年に鹿屋体育大学の最新設備を使った研究により、エビデンスを取得しています。

 

もう少し簡単にその違いがわかるように、日常生活を例に出して紹介してみましょう。“うで体”が、骨盤の左が開いているので、左側に体を動かしやすい特徴があります。長時間右側を向いていて体が歪むと、肩こりがおこりやすくなるため、なるべく左側を向くポジションがオススメです。リビングでテレビとソファを置くとしたら、ソファに座って左側を向きながら見える位置にテレビを置くと、リラックスできる配置になります。

 

“あし体”はこの逆で右側の骨盤が開いているため、右側に体を動かしやすい特徴があります。左側を長時間向いていて体が右に開きすぎると腰痛を起こしやすくなります。なるべく右側を向いていたほうがいいので、“うで体”とは逆に、ソファに座って右側を向きながら見える位置にテレビを置くのが、リラックスできるポジションとなります。

 

このポジショニングは会議のときでも使えます。発案者がいわゆる“お誕生日席”にいるとした場合は、“うで体”は左側を向いて発案者を見るポジションに座り、“あし体”は右側を向いて発案者を見るポジションに座ると、体に負担が少ないため、集中して会議に臨むことができます。

 

発案者が左の人物とした場合、写真では”うで体”は左側を見る下、”あし体”は右側を見る上が理想のポジション

 

字の得意な書き方も“うで体”と“あし体”で違います。“うで体”は左端を起点に右側に動いていくのが得意なので、横書きのほうがバランスよく字を書けます。“あし体”は右端を起点に左側に動いていくほうが得意なので、縦書きを得意とします。手書きで重要な手紙や書類を書くときは、これを利用してみてください。

 

日常生活での体の使い方に違いがあるように、運動時の体の使い方も当然違います。走り方で言うなら、「腕を振って走りなさい」という指導が効果的なのは“うで体”。「足を高く上げなさい」という指導が合っているのは“あし体”です。体のタイプによって得意な使い方は違うので、「腕を振って足を上げろ!」という指導は適切とは言えません。腕を振ることと、足を上げることの両立は困難なのです。

 

と、ここまで、人間は“うで体”と“あし体”に分かれることとその特徴を駆け足で説明してきましたが、そもそも自分がどちらのタイプかわからなければ、体の使い方を参考にすることもできません。次回は“うで体”“あし体”のカンタンな見分け方を紹介します。

 

つづく。

 

文・佐久間一彦

 

『野球タイプ別 鴻江理論 引いて使ううで体、押して使うあし体』