ステロイドって何? 【ドクター長谷のカンタン薬学】




もちろん、アナボリックステロイドは治療薬としても使われています。たとえば骨髄不全の患者さんは血を増やすことができないため、アナボリックステロイドによって血をつくる細胞を増やしたりします。

また、最近ではLOH症候群と言って、加齢によりテストステロンが低下する病気にも使われます。いわゆる男性の更年期障害といわれている症候群です。

テストステロンが低下すると、鬱や性機能低下、認知機能の低下など、さまざま問題が起こります。テストステロンを一定レベルまで引き上げるためにアナボリックステロイドを用いるのです。

副腎皮質ステロイド同様、アナボリックステロイドにも副作用はあります。もっとも一般的な副作用は血圧上昇とコレステロール値の上昇。これにより、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系の病気を誘発する原因ともなります。また、女性の場合は、男性っぽくなり、ひげが生えてきたりすることがあります。

このようにステロイドと言っても、病院で処方されるステロイドと筋肉増強剤のステロイドはまったく違うものです。ステロイド=筋肉増強剤ではないということを覚えておいてください。

副腎皮質ステロイドは、男性ホルモン系のステロイドなどよりも圧倒的に製剤数が多いため、非常に弱いものからすごく強いものまで、段階が細かくわかれています。症状に合わせて使い分けてもらえば効果的に使うことができると思います。

繰り返しになりますが、副作用が大きい薬でもあるので、使用法にはとくに注意してください。


長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社