そもそも人はなぜ疲れるのですか?【疲労回復の専門家・福田英宏先生の「しっかり休めていますか?」】




日々ハードなトレーニングに勤しむ方からサラリーマンや主婦の方まで、すべての人にとって共通して必要なのは休息・リカバリーでしょう。あなたはしっかりと体を休ませることができていますか? 今回、プロアスリートなどに「リカバリー理論」を指導するほか、休養や健康関連を展開する企業のコンサルティングを手掛ける、“疲労回復の専門家”福田英宏先生にお話を聞きました。まずは、「そもそも人はなぜ疲れるのか?」について。
※本記事は、2020年に『VITUP!』で公開した記事を再編集して紹介するものとなります。

疲労は体ではなく脳が疲れること

――今回は“疲労回復”というテーマでお話を伺っていきますが、そもそも、人はなぜ疲れるのか?疲労とはいったい何なのか?そこから教えていただけますか。

福田:まず多くの人の認識として、運動をすると乳酸が蓄積され、それが原因で疲労状態になると思っている方も多いのではないでしょうか。以前はそう考えられていたのですが、実はかなり前にその考えは否定されています。疲労は体で感じるものではなく、脳で感じるものなんです。

――原因は体にあるわけではないんですね。

福田:はい。脳の中で自律神経が酷使されること、それが疲労の原因になります。運動で体温が上昇したり心拍数が上がったりすると、自律神経の中枢(視床下部・前帯状回)に負荷がかかり、疲労感が生まれます。例えば、ランニングを10キロしたとしても、夏に行なう場合と冬に行なう場合では疲れ具合が違うのではないでしょうか。夏は暑いので、汗をかくと体温を下げるために自律神経がより活発に働くため、夏のほうが大きな疲労を感じるはずです。

――その認識を持っていない人は多いと思います。

福田:私は以前にベネクスという疲労回復ウェアの会社にいて、8年ほど前から休養に関する啓蒙活動をしていたのですが、トップアスリートや指導者の方でも、疲労=乳酸の蓄積だと思っている方が多かったですね。なので、一般の方でも「疲労とは何か」を理解されている方はまだまだ少ないと感じています。

――ということは、疲労回復のためには自律神経に働きかけるアプローチが大切になってくるということですか?

福田:そうですね。もう少しその自律神経について詳しく説明すると、自律神経は呼吸、消化吸収、血液循環、心拍数といった生体機能を調整する神経であり、なかなか自分の意思ではコントロールできないものなんですね。そのなかで交感神経と副交感神経というものががあり、交感神経は活動的な神経で車で例えるならアクセル、副交感神経は休むもの、つまりブレーキの役割のようなものになります。

◆疲労感とは交感神経が優位な状態