限界を超えられる理由がある
――ここに来れば、4スタンス理論によって自分がそれまで知らなかった体のことがわかる。ジムの名前であり三土手さんの座右の銘でもあるという「No Limits」の通り、まさに限界を超えられる場所ですね。
三土手 やはり多くの方は、自分で自分の脳にリミッターをかけてしまっているところがあるんですよ。パワーリフティング選手だった私の場合、日本人だから、あるいは重量級だから世界に通じるわけがないという風潮が、昔はあったわけです。そんな若かりし頃、ある最強の女子リフターがTシャツにサインを書いてくれたときに「No Limits」と添えてくれました。「すごくいい言葉だな」とそのときに思い、自分の座右の銘にして頑張っていこうと思ったんです。
――その後、まさに限界を超えるような記録を、次々と打ち立てていきましたね。
三土手 後に私は世界チャンピオンになりましたが、やはりそのときに思ったのは、日本人だからとか、アメリカ人だからとかは関係なくて、そもそも大きな枠で言ったらみんな地球人でしょという話なんです。だから、みんなに可能性がある。特にあの時代はSNSもないから、世界のどこかで誰が何キロを持ち上げたかはリアルタイムではわからない。だから、とにかく自分が頑張れることをやるしかなかった。リミッターを外して自分のトレーニングを常に向上させていくことを大切にして。日本の中にはライバルは誰もいませんでしたよ。今自分がトレーニングをさぼったら、さらに頑張っているアメリカやロシアの選手には勝てない、そう思いながらトレーニングを積んでいました。
――常に、自分との勝負だったと。
三土手 「限界を超える」と言葉で言うのは簡単ですが、それを実践していくのは難しいものです。だからこそ、このジムに来てくれるみなさんが限界を超えるための手伝いをしたい、その人のリミッターを外してあげたいと思っています。精神的なリミッターもだし、体の使い方のリミッターを解除するということもあります。
――その言葉を聞いて、ここに来たいと思ってくれるお客様は必ずいると思います。
三土手 うちに来てくれるお客さんがよく言うのですが、「No Limitsだと、なぜかいつもより重いものが上がるんだよ」と。それも、実はからくりがあるんです。ゴルフや野球ではよく言われることですが、タイプによってリズムのとり方が違います。だからインパクトの瞬間に、そのタイプがもっとも反応できる掛け声で「おりゃー!」って言っているんです。A1だったらこのタイミングで、B2だったらこのタイミングで、と。声を出すと力が上がると言われていますが、自分の発する声だけではなく、周りから発せられる気合いにも脳が覚醒して反応し、出力が出るんですよ。
――掛け声一つにしても、4スタンス理論によって裏打ちされた理由があるんですね。
三土手 その人が気持ちよく上げられるタイミングで掛け声を出すから持ち上がるんですよ。そのように、実は自分で限界だと思っていても、限界がまだまだその先にあることは多いんです。だからそれを引き出してあげるのが、私の今もこれからもやっていくべき仕事かなと思っています。
★vol.6からは実践編へ。4スタンス理論をベースにしたトレーニング指導を、動画でお届けします
取材・文/木村雄大 写真/中野皓太
三土手大介(みどて・だいすけ)
1972年8月26日生まれ、神奈川県横浜市出身。ウエイトトレーニングジムNo Limits代表。レッシュマスター級トレーナー。一般社団法人レッシュプロジェクト理事。
高校3年生のときにパワーリフティング競技をはじめ、20歳のときに全日本選手権110キロ級で史上最年少優勝。次々に日本記録を塗り替え、世界大会にも積極的に参戦。2000年の世界選手では、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトでトータル1トンを記録し、ベンチプレスは当時の世界記録を塗り替えた。現在はトレーニングジムNo Limitsの代表として、トレーニングの指導にあたっている。自己ベストは、スクワット435キロ、ベンチプレス360キロ、デッドリフト320キロ、トータル1060キロ。4スタンスタイプはA2。
―――――
【WEIGHT TRAINING GYM No Limits】★HP⇒http://nolimits-gym.com/
〒183-0021
東京都府中市片町2-9-5 ベル片町1F
(JR南武線、京王線分倍河原駅より徒歩4分)