サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。今回は、一日に飲む水(水分)の量について。
※本記事は、2020年に『VITUP!』で公開した記事を再編集して紹介するものとなります。
■何もしなくても一日2.5ℓ程度の水分が抜けていく
私たちの体の約60%は水分です。日々の体重を気にしている人も、その増減はじつは体内の水分量の差に過ぎません。焼肉を食べ過ぎて翌日の体重が〇kgに増えたと言っても、そのほとんどは体内の水分量と腸内に残っている食べ物の残骸です。一夜にして体脂肪が何kgも増えることはないのです。
逆にサウナに入ったり、ランの練習後に体重が減っていても、それは脂肪が燃えて減ったのではなく、単に発汗で水分量が減ったと考えるのが自然です。
それほど私たちの体は水分と密接な関係にあるわけで、大きな水のタンクを背負っているような状況と言えるかもしれません。そして、この水のタンクには無数の小さな穴が開いている状態であり、さまざまな栄養素の化学反応はこの無数の穴の開いた水のタンクの中で行なわれているのです。
特段、汗をかくような運動をしていなくても、日常的にこのタンクからは水が漏れており、一日に2.5ℓほどの水分が抜けています。この抜けた水分量が全体の2~3%に達してしまうと熱中症の前兆でもあり、また確実にパフォーマンスが落ちてしまいます。つまり、体重60kgの人がランの練習後に1~2kg体重が落ちていたら、確実にパフォーマスが低下しているということなのです。
平均的に2.5ℓほどの水分が体から抜けているわけですから、最低でも2.5ℓ/日は摂取する必要があるということになります。
ただしこれは、それほど意識をしていなくても自然に摂取している量とも言えます。あえて水分を摂らないという行為をしなければ、だいたい摂取していると考えていいかと思います。むくむとか太るとかといった理由でノドが渇いても、水分補給を制限するようなケースは注意が必要となります。
問題は、トレーニングやスポーツをする場合にどれくらい補給するべきか、という点です。
日本体育協会から水分補給のためのガイドラインが出ており、運動強度と水分補給の目安が示されています。競技によってまちまちではありますが、ざっと1時間に500~1,000mlという目安の量が示されています。それと同時に、競技前の摂取もセットで示されていて、こちらもざっと250~500mlを摂りましょうということです。
持久系の長時間競技になればなるほど、水分のみならずナトリウム(塩分)補給の重要性も増してきます。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。