研ぎ澄まされた肉体美とハイクオリティなコスプレで、見る人を魅了しているあおさん。加えてパワーリフティングの大会でも活躍しており、ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会・男子74㎏級で準優勝の実績を残した本格派トレーニーだ。今回は全3回のインタビューで、そんなあおさんの歩みに迫っていく。第2回では、人生が変わったという大学時代について聞いた。
筋トレサークルの扉の向こうは、オタクの世界だった
――筋トレサークルでの出会いとは、どのようなものだったのでしょうか。
「さぁ筋トレをしようと思って入ったのですが、部員の方に思いの他オタクが多かったんです。もともとアニメ好きだったので、そこですっかり意気投合してしまって(笑)。当時バイトをしていてお金もあったので、アニメの趣味にどっぷり浸かっていきました」
――ゴリゴリの筋トレサークルでオタクが多いのは、意外な展開でしたね。
「そうなんですよ(笑)。もちろん設備も整っていてすばらしい環境だったので、みんなしっかり筋トレもしていました。日々鍛えつつ、トレーニングの後に一緒にライブを見に行ったり、アニソンカラオケバーに行ったり、そういった活動を楽しんでいました。これが後に、コスプレをするきっかけにもなりました」
――じつは筋トレ界隈には、アニメ好きの方が比較的多いのでしょうか。
「これは本当に偏見なんですけど、筋トレって正直1人で完結するじゃないですか。大体の競技はコミュニケーション能力が必要で、それが難しいという人もいると思うんです。その点、筋トレは1人でもできるので、団体行動が苦手なオタクの方でも取り組めるのが大きいんじゃないかと思います。というのも、実際に僕がそうなので(笑)。ひとりで黙々と取り組める強みが、筋トレにも活かされるのだと思います」
――性格も影響していると。
「はい。僕自身、あまり人と協力して何かをするのが得意ではないんです。筋トレもトレーナーをつけずにずっとやっていて、自分なりにいい方法を試行錯誤し続けてきました。そういった意味では、筋トレもアニメの趣味も、無理せず共有できる仲間ができたのはうれしかったですね」
――では、やはりコスプレも筋トレサークルに入ったところから?
「そうなんです。サークルの仲間に紹介してもらった、オタク向けのSNSのようなものがきっかけでコスプレを始めました。もしその流れがなければ、今ごろコスプレをやっていないかもしれません。いきなりイベントでやるのはハードルが高かったので、内輪でやる分にはいいなと思って始めました」
――コスプレには、以前から興味があったのでしょうか。
「はい。前から興味があって、高校2年の時にコミケに初めて行ったんです。そこで本格的なコスプレを見た時は、もう衝撃的でしたね。それまでのコスプレのイメージって、失礼ですけどおじさんがプリキュアの格好をするみたいな、そういう感じだったんです。でもコミケに行ったら、みんなクオリティも高くてカッコいいし、かわいい人もたくさんいて、コスプレってこんなにすごいんだと衝撃を受けました。その時から、いつか自分もやりたいなと思うようになりましたね。それから期間はだいぶ空いたんですけど、大学生になってついに実現できました」
――鮮烈な出会いだったのですね。コスプレを実際にやってみてどうでしたか。
「自分じゃない何かになっているという感覚があって、めちゃくちゃテンションが上がりましたね。今でもそういう感覚があるんですけど、当時は今の10倍くらい高揚感がありました。コスプレしている間もとにかく楽しかったです」
――自分ではない何かになれると。
「はい。今でもコスプレをしているのも、有名になりたいからとかそういう気持ちはなくて、コスプレ自体が楽しいからやっている感じですね」
――あおさんがコスプレを始めて、いろいろなイベントにも出るようになったんですよね。
「そうですね。最初は内輪のふたりでやったんですけど、やはりコミケでコスプレをやりたいという思いが強かったんです。コスプレを始めた年のコミケにさっそく参加して、それ以降ずっとですね。前回コロナで行けなかったんですけど、それ以外はフル参加です。あとはコミケ以外でも結構コスプレイベントがあって、幕張メッセでニコニコ超会議や東京ゲームショウ、最近はアコスタ池袋などにも行っています」
――そういったイベントに行くと、いろいろな方々との出会いもありますよね。
「それは本当に大きいですね。今の人脈はほぼコスプレで知り合った人たちです(笑)。そういうイベントとか、コスプレ以外の声優のイベントにも行っているので、そこで知り合った人と週末などに主に遊んでいます」
――あおさんはコスプレを始めた当時、あまり人と一緒にやったりするのは苦手だというお話でした。コスプレをすることで、それは変わってきましたか。
「そうですね。だいぶマシになったと思います。前はまったく人と喋ることができなくて、学校とかでもずっとひとりでいるようなタイプだったので。それがやっぱりコスプレをするようになってから、いろいろな人と喋るようになりましたね」
――それは自然と楽しいと思えましたか?
「そうですね。人と喋ったりするのは楽しいと気づけました。大学の時はお酒も飲まないし、飲み会の何が楽しいんだと思っていましたけど、最近はオタク友達と飲んだりするのも楽しいと思えるようになりました」
――キャラになりきるのも魅力ですし、コスプレを通じて築ける人間関係も魅力なのですね。
「はい。たとえば鬼滅のコスプレをしていると鬼滅が好きな人が集まってきますし、格ゲーのコスプレをしていれば格ゲー好きの人が集まってきたりするので、共通の趣味の友達が増えるのは大きいですね」
――コスプレでの、今後の目標はありますか。
「次の夏コミに向けて、アニメ・遊戯王のギルフォード・ザ・ライトニングというモンスターのコスプレをしようと思っています。ゴリゴリマッチョな剣士なのですが、今はその衣装をつくっている感じですね。ネットで見た範囲では、他のレイヤーさんがやっていなかったので、自分がやって三次元化できたらいいなと思いました」
――筋トレサークルに入ってから、コスプレの世界に向かっていった印象が強いです(笑)。ちなみに、パワーリフティングの活動はいつ行なっていましたか?
「じつはパワーリフティングも大学の頃からやっていて、大学4年生の時に初めて大会に出場しました。コスプレを楽しみながらも、ちゃんと鍛えていましたよ(笑)」
◆最終回は、あおさんのパワーリフターとしての活動について
取材・文/森本雄大
写真提供/あお
あお
本格的なコスプレで人気を集めるコスプレイヤー。鍛え抜いた肉体で披露するコスプレには定評があり、筋肉レイヤーチーム「肉体造形部」に所属している。パワーリフティングの選手としても活躍し、2019年、2021年の神奈川県大会で優勝。2020年にはジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会・男子74キロ級で準優勝に輝いた実績を持つ。
◆Twitterアカウントはこちら(あおさん、肉体造形部)