風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……。日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、使い方を間違えると大変! この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。
※この記事は2019年に投稿されたものを、再編集してお届けするものとなります。
Q.錠剤、カプセル、粉…薬にいろいろな形があるのはなぜですか?
「必要な時に必要な分だけ必要な部位に届ける」というのが、薬の大前提です。薬にいろいろな形があるのは、それぞれの形に意味があるからです。
まずは主な剤型と特徴から紹介しましょう。
★水薬……子どもや嚥下能力が下がっている高齢者でも飲みやすく、量が調節しやすい。ただし、保存性が悪いので、冷蔵保存して早めに飲み切ること。
★粉薬……苦くて飲みにくいものもあるが、吸収が速く量が調節しやすい。
★顆粒……粉薬のように飛び散らないので飲みやすい。味をよくするためのコーティングがしてあったり、徐々に溶ける膜で覆われていたりするので、噛み砕かないで服用する。
★カプセル……粉末や顆粒、あるいは液剤などの薬をカプセルに詰めたもの。カプセルはゼラチンでできているため、少量の水や唾液でくっつきやすく、服用する水の量が少ないと食道の途中でひっかかったりするので、必ずコップ1杯(約200ml)の水で服用する。
★錠剤……薬を圧縮成型したもの。胃酸で溶けないように被膜をつけたコーティング錠などの工夫がされている。勝手につぶして服用しない。
経口薬には上記のような特徴がありますが、基礎知識としてどのように体に届けられているかを知っておくといいでしょう。薬を飲むとまずは胃に届けられます。続いて腸を通り、門脈という血管に入ってすぐに肝臓にいきます。肝臓に入って最初の代謝を受けた後に、血流に乗って全身を巡り、問題のある体の組織(患部)へと届けられます。そして再び肝臓に戻って代謝を受けます。このように薬は体内を循環しながら、最終的に肝臓で効果のない形となって、腎臓などから体外に排出されます。
薬はこのようにして体に届けられます。薬の効果が、効かせたい場所で適切な強さと長さで得られ、なおかつ副作用を起こりにくくするために、内服薬の剤型は「いつ、どこで溶けるのがいいか」を考えてつくられているのです。
たとえば、胃を荒らしてしまう成分や、胃で溶けると効果が落ちてしまうような成分を含む錠剤は、胃では溶けず腸で溶けるような工夫をしてあります。カプセルの場合は、すぐ溶ける薬の粒とゆっくり溶ける薬の粒を一緒に入れておき、一定の効果が長く続くようにしているものもあります。なのでカプセルが飲みにくいからと言って、開けてしまって飲むというのは、あまり賢い飲み方とは言えません。
薬にいろいろな形があるのは、それぞれに意味があるからだということはおわかりいただけたでしょうか。飲みにくいからといって自己判断でつぶしたり、カプセルを開けたりして飲むのは絶対にやめてください。どうしても飲みにくいという場合は、必ず医師や薬剤に相談するようにしてください。
長谷昌知(はせ・まさかず)
1970年8月13日、山口県出身。九州大学にて薬剤師免許を取得し、大腸菌を題材とした分子生物学的研究により博士号を取得。現在まで6社の国内外のバイオベンチャーや大手製薬企業にて種々の疾患に対する医薬品開発・育薬などに従事。2018年3月よりGセラノティックス社の代表取締役社長として新たな抗がん剤の開発に注力している。
Gセラノスティックス株式会社