昼は人力車を引っ張り、夜はライブで盛り上げる。ハードなスケジュールを乗り切るパワフルな体作りの秘密に迫る【現役俥夫ボーカルユニット・東京力車】




浅草の魅力を知ってもらうため、アーティスト活動と並行して日々人力車を引っ張り浅草を走り回る「東京力車」。俥夫(しゃふ)としての活動では爽やかな笑顔で浅草を観光案内し、ライブではダイナミックで熱いパフォーマンスでファンを魅了。そのエネルギーはどこから溢れ出ているのか? 彼らのパワーの源を伺ってみました。第3回となる今回は豪快なライブを作り上げる体の秘密について。

東京力車にしか表現できないメッセージ性の強いライブは必見!

――人力車を引っ張る俥夫(しゃふ)としての活動は非常に大変だと思いますが、アーティスト活動にも良い方向に作用しているのでは?

白上 僕らはライブだと、歌って踊るうえにアクロバティックな動きをしているので、人力車を引っ張って身につけた体力はすごく活きています。

――以前ライブを拝見した際も、アクロバティックでエネルギッシュな動きをされていて驚きました。バク転をしていたり、組体操みたいなこともされていましたよね?

石橋 やっていました。組体操なんか小学校以来ですけどね(笑)。俥夫としての活動とアーティスト活動はすごく似ていると思っていて、とにかく「人の笑顔を見たい」「人を楽しませたい」という強い気持ちが共通しています。昼は人力車、夜がライブというスケジュールで、正直僕らもクタクタな状態で、最後倒れそうにもなるくらいの状態になるのですが、そこをこらえて、メッセージソングを届けて、できるだけたくさんの方の心に響かせていきたいなと思っています。ライブだけではなく人力車を引っ張るのもそうですけど、毎日何かを成し遂げたいという強い思いでやっている姿勢が僕たちの魅力かなと思っています。だから、「大変だからしんどい、やめよう」とかじゃなくて、そこを乗り越えることによって、その先に届けられるものがあるのかなって伝えていけるのは、他のアーティストとは違う強みだと思っています。

田井 今日みたいな35度を超えている暑い日や、大雪が降っている状況の中でも、お客様に全力で楽しんでもらう気持ちは忘れず人力車を走らせています。そういう「おもてなし」の心は、アーティスト活動でも活かされていて、どんな場所でライブをしようが、どんな人が見てようが、僕らを目当てに来ていない人がいようとも、全力でパフォーマンスができているところに活かされていると思います。俥夫としての活動を通して気づけたことを、アーティスト活動に活かせるというのは、僕たちにしか経験できないものをやっているんじゃないかなと思います。

――確かにあのライブパフォーマンスやMCでの言葉からはすごく熱い思いが伝わってきました。特に石橋さんは喉が枯れても精一杯歌っていたり、MCを全力で務められているのも印象的でした。

石橋 ありがとうございます。今度はご心配をかけないように、ペース配分を考えます(笑)。

 

アクロバティックな動きができる秘訣は日々の筋トレにあった!

――アクロバティックで、熱いライブを実現するための体づくりとして、特別に取り組まれていることはありますか?

石橋 僕は懸垂ですね。ちょっと前から始めたぐらいなんですけど、腕立てとかめちゃくちゃきついじゃないですか……。

東京力車事務所にはトレーニング器具が充実。メンバーもよく利用するそう。石橋さんはアームカールバーでトレーニング

白上 懸垂も十分きついけどな(笑)。

石橋 それが違うのよ。腕立てって胸を落として少しキープしないといけないじゃないですか。やめたくても、ダメな時は落ちるしかないけど、懸垂って自分のペースで進められるメリットがあって、必ずしも自分の顔を鉄棒よりも上にあげなくていいんですよね。無理なく続けていけば、初めは1回でもきつかったのが、徐々に回数を重ねることができるんです。懸垂はすごく自分に優しいなと思いましたし、自分に甘い人はぜひ(笑)。

渡邉 オススメしちゃだめでしょ(笑)。

石橋 自分に甘い人にオススメっていうのは冗談で、懸垂だと、背中の筋肉とかがいっぺんに鍛えられるし、公園で簡単にできるからコスパが良いんですよ。

――石橋さんも公園で懸垂を?

石橋 近所の公園でやっています。鉄棒が全部で4つぐらいあるんですけど、いつも誰かしらやっていて、鉄棒がいつも埋まっているんですよ(笑)。

田井 サラリーマンがお昼休憩などに、公園に来て、ジャケットを脱いでシャツ姿でやっているっていうのは聞いたことあります。ちょっと運動してすっきりして帰るみたいな。

田井さんはシックスパッドのボディポールを使った体幹トレーニングを

石橋 ちょうど先日カズ(白上)と一緒に撮影の予定があって、休憩でとある公園に行ったんですけど、お昼12時過ぎくらいになったら、サラリーマンたちもバーッとたくさん来て、ついでにタンクトップ姿のおじいちゃんとかも来てトレーニングしてました(笑)。

白上 ほんとびっくりする光景でしたよ(笑)。

渡邉 その人に取材したいぐらいだよね(笑)。

――でも鉄棒で懸垂は誰でも簡単にできますよね。お金もかかりませんし。渡邉さんは何かトレーニングされていますか?

渡邉 僕はアクロバティックな動き以外だと、組み技で土台になることが多いので、みんなを支えられるように肩や腕周りの筋肉を鍛えるようにしています。例えば逆立ちで壁によりかかってその状態で腕立て伏せをしたりとか。

渡邉さんはアブローラーを使った腹筋をよくやるそう

石橋 土台役が多いもんな。

渡邉 逆にカズ(白上)が上に乗ることがほとんどですね。体重が一番軽いので。

白上 僕の場合は筋力をそんなに鍛えず、バランス感覚を養うために鍛えています。

石橋 一番楽そうだよね(笑)。

田井・白上 そんなことないやろ(笑)。

白上 一番上に乗って、バランスを崩して落ちちゃったりするとだめなので、クランプなどの体幹を鍛えるトレーニングを中心にやっています。YouTubeにたくさん自重トレーニング系の動画がアップされているので、それを参考にトレーニングしています。基本的に上半身中心で、下半身はむしろ逆にケアするようにしています。パフォーマンスだけでなく、歌う面でもいい効果が出ている気がします。体が固まっていたり、温まっていなかったりすると声がでなかったりするので、筋トレして、芯の部分から温めて歌ったりすると結構声の出方が良かったり。

白上さんはプッシュアップバーで腕立て伏せ

石橋 みんな頑張っているけど俺だけ何もやってないからね。

田井 周りでクルクル回ってることが多いもんな(笑)。でもしっかり盛り上げてくれるからありがたい。

――これだけしっかり体を鍛えられているグループも珍しいと思います。

石橋 こんなつもりじゃなかったんですけどね(笑)。

東京力車(とうきょうりきしゃ)
人力車をひっぱる現役俥夫が、エンタテインメントを通して日本の伝統文化、人力車を世界へアピールするために結成したユニット。「和』を基調とした心を揺さぶるサウンドとアクロバティックなステージパフォーマンスで男前な姿が話題を集めている。メンバーは石橋拓也、渡邉善央、白上一成、田井裕一。昨年8月リリースのシングル「ニビイロトーキョー ~チャンチキおけさ~」以来となる「Sole!~おまんた囃子~」を7月20日より全国リリース。

取材・文/中野 皓太
写真/アリモト アズミ