競技性とエンターテインメント性を持ち合わせながら、そのときどきに合った“かっこいいカラダ”を競う大会として2019年にはじまったSuper Body Contest(SBC)。前回、SBCのヘッドコーチ兼ディレクターの木下智愛へのインタビューでは、4年目までの手応えと、今年スタートした「SBC MONOKINI」について聞いた。インタビュー後編の今回は、SBCの2022年のテーマである“EVOLUTION”を象徴するようにスタートした新カテゴリー「SBC TIGHT(タイト)」「SBC DENIM(デニム)」、そして今後との展望について。
イメージはパーティーに行く女性の姿
――8月の静岡ボディビル・フィットネス連盟との同日開催イベント「SBBF×SBC」では、新競技「SBC TIGHT」がお披露目となりました。
木下 より出場しやすい、洋服を着たカテゴリーをつくりたいとずっと思っていたんです。とはいえ、もちろんかっこいいステージにすることは忘れずに。女性はヘアメイクやオシャレをして出かけるのが好きじゃないですか。なので、少し前の時代ではありますが、クラブやディスコ、パーティーに行く姿をイメージしてタイトドレスのカテゴリーを立ち上げました。ネーミングも、その姿を想像するとドレスではなく、「TIGHT」しかないと思いました。
――実際にコンテストを見させていただきましたが、既存の女子カテゴリーとは違った華やかさを感じました。求められるボディラインも違うんですよね。
木下 SBC部門はVシェイプ、TREND部門はスリム、MONOKINIもVシェイプだけど少し緩やかという基準の中で、TIGHTは「砂時計ボディライン」をコンセプトとしました。理由としては、SNSのハッシュタグで「#砂時計ボディ」というのが多く使われているのを目にしたこともあって、SNSの世界で広まっていくことを意識しつつ、私がやってみたいと思っていたイメージとピッタリ合ったので、これはきっと流行るのではないかと。
また、今の女性のトレーニングの流行はウエストのくびれとヒップだと思うんです。SBC部門も肩からウエストまでのVシェイプを基準にしていますし、女性トレーニーはみなさん必ず強化するとこであり、憧れなのではないかと。ポージングもダンス的要素を少し多めに入れているので、やはり見ていて楽しいステージになっていると思います。
――非常にコンセプトがしっかりと確立されているカテゴリーなんですね。
木下 ただ、「砂時計ボディライン」の選手でなきゃ出られないというわけではありません。競技の点ではその身体のほうが優位かもしれませんが、基本的にはポージングでそのラインを見せられるようにしています。例えば、規定ポーズでは足をクロスさせたり、ウエストをツイストしたり、手はワイドに広げないで下ろすことによって、ボディラインが美しく見えるように。
――衣装も、赤と黒で統一感があって美しいと感じました。
木下 ここもこだわりのポイントなんですよ。CHARMクラス(18歳~39歳)はブラック、MONARCHクラス(40歳以上)はレッドにすることで、統一感のあるインパクトさが生まれると思いまして。40代以上の方は、レッスンやコンテストで明るい色や派手な色のビキニを好む傾向があるなと思ったのでレッドを、逆に若い選手は黒やネイビーを選ぶことが多いんです。
――こだわりに抜け目がありませんね。我々が気付きにくいところまで、木下さんの情熱がこのカテゴリーに詰まっている気がして、コンテストの見方も変わりそうです。
木下 ありがとうございます。他のカテゴリーにも当てはまることではありますが、やはりエンターテインメントとして、選手たちみんなと一緒に演出をつくるものにしたいという思いもあるんです。例えば、TIGHTの予選審査のウォーキングの導線は、まっすぐ一列になって選手たちがそのまま入場してくるのではなくて、少し人との間隔を狭めたまま斜めのラインで歩いてきて、センターに来たら折り返して、ステージ後方の番号順の立ち位置向かっていく。そうすることで、きれいな扇形に見えるようにしました。BGMも、「もっと昔懐かしい、クラブやディスコのイメージにしてください」といつも一緒に音を作っている作家さんと相談して、試行錯誤を重ねながら完成させました。
デニムの由来はまさかの
――「SBC DENIM」についてはいかがでしょう。男子カテゴリーとはいえ、やはり細かいこだわりが詰まっていると察します。
木下 もともとは代表が昨年に「ジーンズってかっこいいよね」みたいな話をポロっと話したところからはじまりました。裸足にデニム姿って衝撃ではないか?いう話の中から、だったらTIGHTとDENIMを男女のファッション性のあるカテゴリーとして一緒に出すのはどうかと。男子選手にもヒアリングしたら、かっこよさそうですねという声もあったので、立ち上げることになりました。
――ネーミングを「ジーンズ」ではなく「デニム」にした理由は?
木下 迷わずにそう決めたのですが、実は個人的な理由があって(笑)。
――というのは?
木下 私は犬を飼っていて、自分の言うのもあれですが愛犬家なんです。Instagramで犬友がたくさんいる中で、同じく犬を飼っている方のInstagramもよく見ていて、シーズー界のアイドルであるデニムちゃんという子の飼い主さんとつながって。その方はデニム素材がすごく好きでデニムという名前を付けたらしいのですが、DMでやりとりする中で「デニムもSBCに出てみたいな」と言ってくださったのがすごく嬉しかったんです。そのときにこのカテゴリーが始動に向けて動き出していたので、もうこれは新しいカテゴリー名は「デニム」にしするしかないと(笑)。ジーンズだとちょっと当たり前すぎるかなというのもあったので、良いネーミングなんじゃないかと思っています。
――まさかの裏話でした(笑)。
木下 もちろん、コンセプトもしっかりありますよ。やはり足が見えないぶん、腹筋がシックスパックに割れているのはマストです。服を着ているからといって緩めの基準にするのではなく、上半身はハードな基準としています。とはいえ、フィジーク競技のように大きく広くある必要はなくて、肩幅はSBC部門とTREND部門の中間くらいがベスト。ジーンズはあくまで私服なので、ワイドすぎる上半身ではなく、それにちょうど合う肩幅がかっこいいという基準です。
――ポージングでも、上半身を広く見せようとするのはNGだと。
木下 そうですね。広背筋や大円筋を広く大きく見せようとするのは減点の対象になります。フロントポーズは、「アームスダウン」という片手を腰につけるか両腕を下ろすポーズと、「アームスアップ」という両腕を上げるポーズを規定としています。「アームスアップ」のコールでみなさんの腕が同時にパッと上がるところは、本当にかっこいいんですよ。
――“かっこいい”を求めるのは、SBCとして一貫していますね。
木下 その通りですね。あと他団体の大会などでは「ポーズダウン」があるかと思いますが、あれをTIGHTとDENIMでも取り入れようと思い、「Show of the pose!」というのを予選審査に組み込んでいます。コールとともに全員が5秒間、それぞれが好きなポーズをやるんです。予選審査でやるとのも一つのポイントで、せっかくコンテストに出ても規定ポーズだけをやって終わってしまうのはもったいない。予選で落ちてしまう選手も含めた全員に、フリーポーズでしっかりと見せ場をつくってあげたいなと思いから実施することにしました。
――競技性もエンタメ性も求めつつ、選手の気持ちに寄り添っているコンテストですね。今後も、新たなカテゴリーが増えていくんですよね。
木下 はい、8/21(日)の東京大会では、子どもを対象にした「SBC KIDS」も開催します。ある選手の方に、「うちの子も何かできないですか?」と言われたのがきっかけです。その方が大会に出場するときはいつもお子さんが応援にきていて、家では一緒にポージング練習みたいなことをしているようなんです。そうしたらその子が、「自分も出たい」と言っていたとのことで、じゃあやろうと。
――ボディコンテスト界では異例のカテゴリーとも言えますね。
木下 ただし、順位は付けずにみんな優勝です。ステージ上でしっかりパフォーマンスできるか心配な子もいらっしゃると思いますので、親御さんも一緒にステージに上がっていいということにしています。競技というよりは、家族みんなでパフォーマンスを楽しんでもらうのが目的ですね。
――先日、2023年から「SBC MERMAID(マーメイド)」の開催も発表されましたね。最後に、こちらについても聞かせてください。
木下 ロングドレスのカテゴリーですね。タイトドレスがあるならロングドレスがあるべきだろうと。タイトドレスがパーティーなら、ロングドレスはちょっと社交的な場に行くときの姿をイメージしています。まだ詳細は詰めているところですが、ボディラインというよりはウォーキングやターンの美しさ、エレガントなポージングが評価されるカテゴリーになる見込みです。もちろんBGMも制作中です。これまでのカテゴリーでは比較的アップテンポな曲で選手たちの気分が高まるものが多かったですが、ガラッと変えて、スローテンポなものにする予定です。
――「MERMAID」というネーミングも素敵ですね。
木下 いわゆる「ドレス」みたいなものは他の団体にも既存競技としてあるので、それにはしたくないというところから入って。ヒップらか下のラインにかけてのところがシュッとすぼまっていて、そこから裾が広がっていく形……あ、これはマーメイドかな?と(笑)。人魚のように、美しく、インパクトもありますし。ドレスの生地も規定のものを選定しているところです。準備が出来次第、年内にまずは無料体験レッスンを開催予定ですので、来年を楽しみにしていてください!
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取材・文・写真/木村雄大