海外遠征で困ることは…「湯舟がないのは辛い」
――朱里選手はUFC、華奈選手はベラトールと、海外での試合を経験しています。自分なりの海外で勝ち抜く秘訣みたいなものはありますか?
朱里:華奈さんはこの前も海外で勝ってたよね。自分も経験しているからこそ、海外で勝つことの大変さをわかっているので、めちゃくちゃすごいなって思いました。しかもランキングが上位の強い相手に勝って、さすがだなと思いました。
渡辺:ありがたいです。褒められると恥ずかしい(笑)。
――朱里選手が海外での試合を経験して、一番大変だったことはどんなことですか?
朱里:やっぱり移動ですね。試合のときは減量もしているので、その中で移動して時差もある中で試合をするとなると、その土地の選手のほうがコンディションを整えやすいので、そこが難しいところですね。
渡辺:海外での試合を経験すると、日本だったら楽だよなって思うことだらけだよね。
――華奈選手の先日の試合は、まさに地元の選手との試合でしたね。
渡辺:ブーイングもありましたけど、自分はあまり気にしないタイプなので、そこは問題なかったです。
朱里:海外だと湯舟がないのがしんどくない?
渡辺:湯舟がないのはしんどい。アメリカで試合をした時は、アップ場が寒いくらい涼しくて、全然汗が出なくてそれがきつかったですね。
朱里:日本とは環境が違うから、コンディションを整えるのがすごく大変だよね。
渡辺:あとは言葉が通じないのもストレスになるよね。
――試合前の減量も国内と海外では違いますよね。
朱里:自分は9㎏、一番大きかったときは10㎏くらい落としたこともあります。
渡辺:朱里さんとトレーニングの時に会うと、どんどん小さくなっていってた(笑)。直前になると「細っ!」と思うくらい、めっちゃ細かった!
朱里:カリカリですよ(笑)。
渡辺華奈を悩ませる水着問題。計量時と普段のギャップ
――移動や減量以外に海外の試合ではこれが大変ということはありますか?
渡辺:海外の場合は荷物が多くなります。少しでも「これはいるかな」と思うものは全部入れてしまいます。合宿だったら荷物は少ないんですけど、試合の時は「これがなかったどうしよう」みたいに、いろいろ考えるのが嫌だから、日本食を持っていったり、少しでも必要かなと思うものは全部持っていったりして、荷物が多くなりがちです。
朱里:確かに日本食は持っていくね。数日だからそんなに数はいらないのがわかっているのに無駄に多く入れちゃう。
渡辺:この前の試合の時は湯舟を持って行ったよ。
朱里:湯舟ってどういうこと!?
渡辺:空気を入れて膨らますと湯舟になる、ポータブル湯舟を持っていったの。
朱里:すごい! そんな便利なものがあるんだ。
渡辺:過去2回、湯舟がなくて減量で困ったので持っていったら、ロンドンは湯舟があって結局いらなかったんだけど。あとは洗濯もなかなかできないから、たくさん練習着や着替えを持って行くと、どうして荷物が多くなる。朱里さんは荷物多くならない?
朱里:UFCのときはReebokがスポンサーだったから、遠征が5日だったら5日分の服を全部用意してくれて、靴もバッグも帽子も全部用意してくれるから、持って行かなくていいんだよね。それを着ないといけないというのはあるけど、全部用意してくれるのはすごく助かった。
渡辺:それはめっちゃ良いね。
朱里:計量の時のアンダーウェアも用意してくれるし、服は全然持っていかなかった。無駄に日本食だけいっぱい持っていって、最終的にあまり食べないんだけど。
渡辺:日本の試合だと、公開計量の時に何を着るかにすごく悩んだ。
朱里:それはあるかも。でも私は最初のキックの試合の時は何も考えてなくて、ユニクロのスポーツブラを着てたかな(笑)。今でも恥ずかしい。
渡辺:逆にシンプルで良いですね。
朱里:ネットで「あれユニクロだろ」とか書かれてて(笑)。
渡辺:プライベートでは絶対に着ない苦手な水着を着るから計量は違う意味で大変です。
朱里:プライベートでは着ないの?
渡辺:ビキニってコスチュームとは違うじゃん。この前、ハワイに行くから水着を買っておこうと思ったんだけど、こんな体をしてお店に入るのが恥ずかしくて。コソっと見てたら「何かお探しですか?」って店員さんに見つかっちゃって(笑)。何着か試着をしたけど、サイズの問題があって、短パンだけ買いました。
朱里:ガタイがあると似合う、似合わないもあるからね。その気持ちはわかる。計量の時って減量しているから、小さくなってるんだよね。
渡辺:そう! これは女子格闘家あるあるですよ。
朱里:計量の時は小さくなっているから、水着を格好よく着られるんだけど、普段着ると「ちょっとやばい」ってなる(笑)。
渡辺:普段はデカイし(笑)。それで言うと、たぶん皆さんは計量の時とか、試合の時のイメージがあって、普段から絞れている、キレキレだと思ってるんですよ。朱里さんなんてすごく絞ってたから、とくにそう思われるんじゃないですか。
朱里:すごくわかる。「なんか、デカくない?」みたいに思われる。
渡辺:友達にも「腹筋バキバキでしょ。見せてよ」とか言われると、「触るなよ!」みたいになる(笑)。
朱里:やっぱり減量している時と、普段では全然違うから、水着の印象はだいぶ変わるかもしれないね。
渡辺:そのイメージのギャップが辛いです。
もしも渡辺華奈がスターダムのユニットに入るとしたら?
――朱里選手はキック、MMAと歩んできて現在はプロレスラーとして毎月かなりの試合数をこなしています。プロレスのトレーニングで何か華奈選手におすすめしたいものはありますか?
渡辺:ロープワーク!
朱里:ロープワークいらんでしょ。
渡辺:チームメイトの選手がYouTubeで、プロレスラーに教えてもらうという企画をやっていて、ロープワークをやっていたんですけど、全然できてなくて面白かったです。あれは難しいですよね。
朱里:初めてやったら難しいと思うけど、華奈さんには必要ないでしょ。柔道で受け身もやってきたし、きついトレーニングで体もメンタルも鍛えられているし、華奈さんは今のトレーニングで十分だと思いますよ。だけど、いつかプロレスをやってほしいなとは思います。自分の「God’s EYE」(ゴッズ・アイ)というユニットがあるので、本当に入ってほしい。
――MMAをやり切ったのちは朱里選手とのタッグが見られるかもしれない。
朱里:私たちは美容室が同じで同じ美容師さんにカットしてもらっているのですが、その美容師さんから、「華奈さんが『COSMIC ANGELS(コズミックエンジェルズ)』に入りたいと言っている」って合成写真が送られてきて、マジかー!って思いました(笑)。
渡辺:私のトレーナーさんが女子プロレスファンなんです。それでスターダムの話をしている時に、『COSMIC ANGELS』はアイドルっぽいユニットだから、自分とは一番遠いと思ってギャグとして「入るならやっぱりCOSMIC ANGELSかなぁ」って言ったら、丁寧に合成した画像をつくってくれたんです。その画像を美容師さんに送ったら、朱里さんのことも知っているので面白がって送ったんです。
朱里:そういうことなのね。華奈さんが一番似合うのは「God’s EYE」でしょ。
渡辺:ユニット加入は置いておいて、朱里さんの試合はまた応援しに行きたいです。
※後編に続く
1989年2月8日、神奈川県出身(33歳)。2008年にハッスルでKGとしてプロレスデビュー。10年にSMASH移籍を機に朱里に改名。プロレスと並行してシュートボクシングやキックボクシングにも挑戦し、14年には初代Krush女子王者に輝く。16年、パンクラスに参戦してMMAに転身。17年、ストロー級クイーン・オブ・パンクラス王座を獲得すると、UFCに初参戦しジョン・チャンミに2-1で勝利。日本人女子初の勝利者となった。20年からSTARDOMに所属。現ワールド・オブ・スターダム王者(取材時)。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW
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