10/1(土)、に東京・北とぴあで行なわれた、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)が主催するフィットネス競技の日本一決定戦「JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2022」。この日、特に注目度が高かったのは「メンズフィジーク新王者」だろう。
今回で3回目の開催となるが、過去2回は寺島遼が連覇。しかしながら、JBBFを“卒業”したことにより、王座は空席に。「我こそが」と、オールジャパン選手権の身長別各位級王者がその座を狙ってこの日のステージに立った中で、頂点を勝ち取ったのは伊吹主税(いぶき・ちから)だった。
「正直、驚きでいっぱいです」と、バックステージで言葉を発した伊吹。戦前の予想では、昨年2位の直野賀優の下馬評が高く、予選審査のファーストコール(その時点での最上位選手による比較)では直野を中心に、伊吹、長澤秀樹、木村拳太の4人がラインナップ。それ以降は、徐々に下位の比較に入っていくのが一般的だが、直野と木村はそれ以降にコールされることはなく、逆に伊吹と長澤はセカンドコールで最終的に5位・6位となった外間博也と穴見一佐との比較が行なわれた。そんな流れもあり、『優勝は直野か木村か』という雰囲気も漂っていたのは間違いなく、伊吹自身が優勝に驚くのは無理もないだろう。
実際に上位の差はわずかなもので、公表された審査結果では、伊吹:12点、直野:13点、長澤・木村:14点と勝負は拮抗。「肩の丸みが圧倒的で、ミッドセクションも強いと言われます。あとは質感が、寺島さんに似てきているとも」と話すように、自身の強みを存分にこの日のステージで発揮できたことが勝利につながったのかもしれない。
そんな伊吹に、「なぜ優勝できたのか?」を問うと、返ってきたのは、「信念」という強い志の言葉だった。
「自分がこうなりたいという信念。僕もフィジークという競技の楽しさを見つけ、ここで勝ちたいと思ってやってきました。この年になっても、こうやって熱中できるものが持てるのを本当に嬉しいことです。なかなかこの年になって、メダルをもらって日本一になる機会もない。僕はこれを誇りに思います」
伊吹は、来月に韓国で行われるIFBB世界選手権にも出場予定。過去2年は日本を代表して世界と戦った寺島が階級別の王者に輝いており、JBBFやファンも含め、多くの期待と日の丸を背負ってステージに立つことになる。
「世界でどう評価されるのか楽しみです。トレーニングの強度を上げて、やれることをやる、それに尽きますね」
日本一の次は世界一を目指し、伊吹はまた次の一歩を進めていく。
取材・文・写真/木村雄大