サプリメントをつくって、使って、指導する。そんなサプリ実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんに、サプリや栄養に関する疑問にお答えいただく連載。バルクアップやダイエットなどでワンランク上を目指すトレーニーはもちろん、健康に関心があるユーザーも必読です。
※本記事は、2020年に公開した記事を再編集して紹介するものとなります。
■主役は食事、補助がサプリという主従関係
サプリメントは、日本語では栄養補助食品などと訳されることが多いと思います。
ポイントはふたつあり、ひとつは「食品」という点です。それは薬ではないという意味でもあります。形状や機能の面から医薬品的な印象を与えがちですが、少なくとも日本国内で製造されるサプリメントは食品ということになります。
もうひとつのポイントは「補助」という点です。つまり補助するものなので、補助されるものがあるということです。それが栄養、すなわち食事ということになります。栄養の主役は食事であって、それを補うのがサプリメントという主従関係なのです。では、食事からだけではダメなのか?という質問についてですが、栄養バランスと充足度がしっかりと満たされていれば、日常的な健康はサプリメントなしでも維持できると思います。
サプリメントを摂る意義はふたつあり、ひとつはそこまで食事の内容に気を遣えない場合です。卑近な例で言えば、朝食時のタンパク質がしっかりと足りている人がどれくらいいるかです。
タンパク質は体内に蓄えておけない栄養素なので、基本的には3度の食事からしっかりと必要量を摂る必要があります。しかし、忙しい、時間がない、食欲が湧かない、といった毎日の朝食のシーンにおいて、タンパク質をしっかりと摂ることは意外にも難しいのではないでしょうか。その際、朝から魚や肉を焼く代わりにプロテインを飲めば、一気に解決をしてくれるのです。そういった意義があります。
もうひとつは、機能を持つケースです。これは栄養補助食品というジャンルから少し離れた「エルゴジェニックエイド」(パフォーマンスを向上させる手段)と呼ばれるケースに近づきますが、栄養としての役割はほとんどないものの、ある特殊な機能を発揮してくれるサプリメントがあります。
例えばクレアチンというサプリメントは、摂取することによってマックスパワーの持続時間が長くなります。このクレアチンを一般の食事から摂取しようと思っても、食べる量が膨大になってしまい現実的には不可能です。
また、BCAAのように栄養としての役割も持ちつつ、トレーニング中の集中力を維持させる機能を発揮するケースもあります。この場合も一般の食材のタンパク質から必要となるBCAAだけを摂取するのは現実的ではありません。
決して主役ではありませんが、上手に活用すればとても便利という側面と、ある機能を求めて摂取する場合において、サプリメントの意義はあると思います。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。